増加する「本社ビル売却」とは?
不動産の価値は、周辺地域の再開発のような発展や土地の需要の変化、コロナ禍のような社会状況の変化などで変動します。
さまざまに変化する価値観があるなかで、会社が所有するビルなどの不動産を売却することは、事業をさらに成長・飛躍させるための1つの手段と言えます。こちらでは、そんな自社ビルの売却を検討する際の重要な基礎知識やポイントをご紹介します。
自社ビルを売却するメリット
まずは自社ビルを売却するメリットは3つ、
「資金調達ができる」「経費削減が可能」「テレワークを主軸にした新しい働き方に切り替える後押しになる」です。以下にその理由をご紹介していきます。
資金調達
自社ビルを売却することは手元のキャッシュを増やし、ビジネスの資金繰りを安定させる効果が大きいです。新たな投資新規事業の立ち上げや設備投資、事業拡大など様々な目的で利用されます。
経費削減
ビルを所有しているとかかってくるメンテナンス費用や管理費用などが削減できます。
特にビルメンテナンスの費用は、ビルの築年数が経過するほどに想定外でかさむことも多く負担が大きくなります。
また、古い物件は空室が増加し、想定していた賃料や管理費が入らないことも少なくありません。そのような場合、管理・運営が思うように進められないケースも出てくるでしょう。こういったようにビル経営が難航した場合、収入以上に出ていく経費が上回るため、経費削減の意図から売却も視野に入るのではないでしょうか。
「テレワーク」を主軸にした新しい働き方へ
現在はコロナ禍も手伝って「テレワーク」を主軸にした新しい働き方が主軸となりつつあります。これまでのように全社員が同じフロアやビルに一堂に介して働く形ではなく、自宅で働く・分散してサテライトオフィス(レンタルオフィス)を利用するなどでオフィス・こと自社ビルの必要性が下がっている企業が少なくありません。
テレワークを主軸にするメリットは以下の5つが挙げられます。
1. 生産性の向上
オフィスでの騒音やストレスがなく、自宅の環境で仕事をすることで、従業員の集中力が高まり、生産性が向上するというデータが多数報告されています。
2. 人材確保の幅が広がる
地理的な制限がなくなるため、遠隔地にいる有能な人材を採用することができます。また、テレワークが可能な環境を整備することで、従業員の働き方の選択肢が増え、採用難易度が下がるという報告もあります。
3. コスト削減
オフィスの維持管理や通勤手当などの経費が削減できるため、会社のコスト削減に繋がります。
4. BCP(Business Continuity Plan)の強化ができる
天災や感染症の流行など、非常事態が起きた際に、テレワークによってビジネスの継続が可能となります。
5. 従業員のモチベーションの向上
柔軟な働き方ができることで、従業員のストレスが軽減され、ワークライフバランスが改善されるため、モチベーションが向上するという報告があります。
テレワークに切り替える契機になり得る自社ビル・本社ビルの売却は、上記のような多くのメリットをうみ、ビジネスの安定・さらなる飛躍を導きえます。
自社ビルを売却するデメリット
ここまで自社ビルを売却する3つのメリットをご紹介いたしました。では、自社ビルを売却する上で、デメリットはあるのでしょうか?
実際、デメリットは存在します。主に「リース料の発生」「ビルの売却によるイメージダウン」が挙げられます。以下にその2つそれぞれの理由を解説していきます。
リース料の発生
1つ目のデメリットは、「リース料の発生」です。
自社ビルの売却後、オフィスが全て不要になることは稀で、多くの場合本社機能を果たすオフィスは変わらず必要となります。その際、退去・移転せずに売却したビルを借り戻し、そのままオフィスを利用するケースも珍しくありません。このような利用方法は「セール・アンド・リースバック」と言われ、当然それまでは発生しなったリース料が発生します。
ですが、それまでに発生していたビル管理コストの多くが削減されるため、結果的にリース料の発生が大きな損失につながる可能性は低いです。
ビルの売却によるイメージダウン
2つ目の理由は「ビルの売却によるイメージダウン」です。
企業のビル売却や事務所移転といった情報は広く周知されます。そのため、ビル売却は、実利的に資金調達に直結する反面、周囲から「業績悪化のため急務の資金調達が必要」と認識され、マイナスな印象を与えてしまう可能性が高くなります。
ですが、その一方で自社ビル売却は、短期での決算内容の改善・経営のスリム化には効果的です。また調達した資金を様々な先行投資に充てることもできるため、進行中の取引をより大きく進展させることも可能です。
このように、自社ビル売却はメリット・デメリットどちらもありますが、直後の決算内容や長期的なビジネスの発展への影響を考えるとメリットが大きいと言えます。
事業用不動産ビルと通常の不動産売却の違いとは?
ここからはより具体的にビル売却の基礎知識を解説させていただきます。
不動産売買といえば皆さまどのようなイメージをお持ちでしょうか?
複数の不動産売買仲介会社に依頼をし、広告を出して買い手(必要とする人)を募り、金額交渉を行い売買契約を成立させる、そんなイメージをお持ちかもしれません。契約成立までは短くて3ヶ月程度となります。
しかし、上記の流れはあくまで住宅・住居系の不動産。オフィスビル・自社ビルのような事業用ビルの売却は、大きく異なる点が3点あります。
1つめは、買い手の募り方です。
まず広告を出し、広く買い手を募る事は非常に少なくなります。
ビルは、所有者にとって収益を作る重要な資産です。そのため資産を手放そうとする事で経営状況や資産状況を調査されてしまうというリスクが生じます。そうしたマイナスの影響を防ぐため、広告による募集を行うケースは少なくなります。
2つめは、依頼する不動産会社の数です。
これは一つ目の内容と関係があります。大々的に買い手を募ることがないため特定の1社に買い手の募集を依頼します。これを専属専任媒介契約といい、優先的に募集活動が行われる点が魅力です。
一方で売却を依頼した1社のネットワークに依存する傾向が高いため、信頼できる不動産会社との契約が必須となります。
3つめは、契約成立までの期間です。
これは長期化する傾向が高いです。1社に依頼する点でも時間も要するのですが、ビルということで住居系不動産以上に動く金額規模が多い点、テナントがいる場合の諸業務や管理会社への通告など手続きが多い点からも、一気に動くことが難しくなります。より良い契約のため、可能な限り高い金額での売却を目指す場合は、長期的に時間をかけ、計画的に進めることが不可欠といえます。
ビル売却の基本の流れ
ここではビル売却の基本の流れを抑えていきます。
1. 売却価格・目的の設定
まずはビルの売却目的のすり合わせや、物件の状態確認を行うため、不動産売買仲介会社などプロフェッショナルに相談することが大切です。
売却価格の設定・目標の設定のポイントは2点あります。
一つ目は、自社ビルの現在の市場価値の調査を行ない、それを踏まえてより正確な売却価格を設定することです。
二つ目は、目的に合わせた売却を行うことです。所有不動産の売却は、これまでメリットとして提示したような売却利益の獲得以外にも、共有持ち分の解消・相続時の分割対策など様々考えられます。したがって、単純な売却額面の大小以上に、その目的を考慮したうえで方法・期間・金額などを相談・決定し、最適な売却を目指すことが大切になります。
2. ビルの売却価格の市場調査
売却に際しては、ビルに対する様々な調査が必要となります。例えば、建物の耐震性や法的制限の確認、建物の修繕や改修の必要性の評価などです。これらの調査を行い、問題がある場合は修繕などの対策を施すか未修繕のまま金額面での折り合いをつけて設定をする必要があります。
また、ビルの売買は需要と供給の関係がカギとなります。近しいスペックのオフィスビル・自社ビルの最新の売却価格相場や、入居テナントの空室状況、周辺ビルの価値・周辺賃貸物件の需要と供給の状況などの調査も必要となります。利益を優先し、相場よりも極端に高く設定した単純な値付けが、かえって売却を難航させるケースは少なくありません。したがってこちらの工程はよりスムーズな売却を目指すため、おろそかにできません。
3. ビルの売却提案ならびに売却先(買い手)候補との交渉
不動産売買仲介会社などに相談し、提案内容を固めます。ビルの購入を検討する方からの問い合わせの際は、ビルの内覧や価格交渉などに立ち合い、最適な売却先の選定を進めます。
4. 売却先(買い手)の決定
売却先候補の中から、売却先を決定します。
5. 契約・決済
契約書の作成を行い、ビルの買い手と売買契約を結びます。売却に関する契約書は、取引の安全性を確保するために重要です。契約書は、売却価格、支払い条件、引き渡し時期、修繕・改修の負担など、売却に関する重要な事項を明確にする必要があります。売買契約で定めた期限内に決済・引渡しを行えば基本的なビルの売却の完了です。
上記が自社ビル・オフィスビル・事業用ビルの売却の基本の流れとなります。
ビル売却のポイント
ここからは、より良いオフィスビル・事業用ビル売却を目指す経営者様・不動産オーナー様ご自身にも抑えておいていただきたいポイントを5つご紹介していきます。
- ビルの価格相場の把握
- 入居テナントが居る場合の売却についての把握
- ビルの修繕履歴を残す
- 管理会社への連絡・相談をする
- ビル売却に発生する費用の把握
では具体的にどのような内容かご紹介していきます。
1. ビルの価格相場の把握
まずは、一つ目のポイントは、「売却を検討しているビルの相場としておおよその価格の把握」です。
下記に紹介するようなサイトで、所有ビルの立地、広さ、階数や構造などを必要情報を入力し、似たような条件の物件の売り出し価格をチェック、おおよその相場を認識しておきましょう。
ビル売却サイト
ビルの売却専門サイトです。物件概要のほかに利回りなどが載っているケースがあり、収益性を含めてチェックできます。
不動産ポータルサイト
様々なサイトがあり、販売中の物件価格だけでなく、物件概要などが掲載されています。中には収益物件専用のコンテンツを持つサイトもありますので比較していただくことで発見があるかもしれません。
国土交通省「土地総合情報システム」
こちらのサイトはSOHOなどの事務所利用可能なマンションの売買をされる方に特におすすめです。
こちらのサイト内には過去5年間の売買取引事例が掲載されていて、特筆すべき点は、「掲載されている価格が成約価格である」という点です。
売買見積もりの出せるサイトはさまざまあり、どれも相場を把握するための活用が可能です。しかし、ここまでご紹介した2種類のサイトに掲載されている金額はあくまでも売り出し価格。したがって、より正確性の高い「実際成約となった取引価格」を求める際は本サイトの方が参考になるかもしれません。
一点注意するべきは、本サイトに掲載の情報が過去5年間の取引事例である点です。5年の間に駅や高速道路のインタ-チェンジができる、再開発で大きく賑わいを見せるなど、周辺環境が変化しているケースもあります。ビルの売却査定では、周辺環境も加味されるため、近しい条件のビルでも相場が大きく変わる可能性がある事をご留意ください。
複数サイトに売却したい所有オフィスビルの情報を提供、おおよその売却価格を査定・比較したうえで、数社の不動産会社をピックアップしていただいた各社により正確な数字の出せる査定を依頼、比較検討の上で専任依頼先を決定してみてください。
2. 売却ビルに入居テナントが居る時は?
二つ目のポイントは「入居テナント」に関してです。自社ビルや本社ビルといった事業用物件の場合、入居するテナントは1社だけではなく複数ある場合は少なくありません。そんなビルの売却が可能かどうかですが、結論から言えば可能です。
テナントが入居している状態でもビルの所有者の変更は可能、ビルを売却できます。これをオーナーチェンジと呼び、注意点としては、現在の所有者とテナントの間で交わされた賃貸借契約を次の所有者が引き継ぐ形で同意して貰う必要があります。テナント側からは、家賃の振込先が変わる以外は基本的に相違・問題はありません。
では「空室があったほうが良い」のか、「テナントが埋まっていたほうが良い」のかという問題の答えは、買い手の需要によって左右される部分が大きいといえます。
多くの場合は、収益性物件の場合のビルの価値は、テナントの賃料や入居率、入居しているテナントの種類といった点も重要な判断基準となりえます。空室があると収益性が悪いと判断され、売却価格が下方修正される可能性もあるため、満室状態で売却することが望ましいです。
一方、自社ビルとして使っていたオフィスビルの場合、空室が多い場合であれば買主がそのほとんどを自社ビルとして利用する、あるいは収益性物件として活用するなど、用途の選択の幅が広がりやすいです。また、空室状態のほうがリフォームやリノベーション、リニューアルが行いやすいため需要が高まるケースもあります。
いずれにせよ、周辺の不動産需要ならびに買い手の購入目的を踏まえて売却交渉を進める必要があります。
3. 修繕履歴を残す
三つ目のポイントは「修繕履歴を残す」ことです。
売却の際は綺麗な物件の方が資産価値が高く、売却時の価格も立地や築年数などの条件が近しいビルよりも査定価格が上回る場合が多いです。
最初はきれいな建物も月日が経つ毎に劣化してしまう事は避けられません。しかし、ビルのメンテナンスを計画的に行っていくことは、劣化の進行を抑え、建物の資産価値の維持に繋がります。こまめなメンテナンスによって優れた状態に保たれることで、大規模修繕やいざ売却となった際にも工期の短縮・コストの抑制がしやすいです。
またメンテナンスが行き届いているビルは、入居が決まりやすいという点も売却時に有利に働きます。きれいに管理されているという目で見て分かる事実はもちろん、オーナー・管理会社の目に見えない気遣いそのものが、テナントに安心感を与えます。結果、退去するテナント数の減少、仮に退去してもすぐに次の入居者が決まったりと、望ましい好循環が期待できます。
また、常に満室のビルは、稼働率の高い投資物件として投資家にも注目されます。
売却の際も前述したように空室率が低いビルは評価が上がりやすく、さらにメンテナンスが行き届いているという点が加われば、立地・築年が近しいものの稼働率の低い他のビルよりも、その査定価格は上回ることが 期待できます。
ビルのメンテナンスに関して、定期的な費用の発生に繋がるため、手をつけ始める事が億劫なビルオーナー様は少なくありません。しかしコツコツと積み重ねた結果、将来的に大きなペイバックに繋がります。ぜひ、ビルの資産価値を維持するためにも、計画的に実施してみてください。
4. 管理会社への連絡・相談をする
4つ目のポイントは「管理会社への連絡・相談」です。重要である理由に関して以下に解説してみました。
ビルや周辺環境についての豊富な情報の提供
ビル管理業務を行う会社は、ビルの維持管理や清掃に努めてきたため、ビルの維持・修繕管理履歴や賃貸契約の内容など、自社が管理するビルに関する情報を豊富に持っています。具体的に書類としては、土地建物の固定資産税や都市計画税の納税通知書、保険料や管理料、水道光熱費などの資料、そして設備のメンテナンス費用関連の書類、レントロールに関するものなどが挙げられます。これらの書類は、普段は管理されていないことが多いので、事前に用意する必要があり、不動産管理会社との連結が重要になります。さらに、定期的にビルを往訪する管理担当者は、ビルだけでなく周辺環境にも詳しく、街の再開発やトラブルに関する情報も持っています。これらの情報は、ビルの評価や売却価格に大きな影響を与える可能性があります。
ビルの現状の把握
ビル管理業務を行う会社は、定期的な点検やメンテナンスを通じて、自社が管理するビルの現状を把握しています。これには建物自体の劣化状況はもちろん、入居テナントの状況なども含まれます。そのため、ビルの売却時にビル管理会社と連携することで、買い手のニーズに合わせた情報提供が可能になります。例えば、投資用物件として購入を希望する買い手にとって、入居テナントの稼働率や、入居テナントがどのような企業であるかなどは重要な情報となります。ビル管理会社は、入居テナントとの密なコミュニケーションを通じて、これらの情報を提供することができます。また、経験に基づくテナント別の適切なコミュニケーション法を活かし、スムーズなテナントの退去を促すこともでき、リノベーションなどを行って収益化物件としての利用を目的とした買い手のニーズに応えることができます。
売却手続きのサポート
不動産仲介会社だけではなく、実は管理会社もまたビルの売却手続きに必要な書類の作成などの手続きのサポートが可能なケースもあります。ビルオーナー自身が手続きに不慣れであったり、時間的余裕がない場合には、管理会社が代行することでよりスムーズな売却手続きが可能となります。
潜在的な購入者との接点
管理会社は、既存のテナントや賃借人など、ビルに関する潜在的な購入者との接点を持っています。これらの情報を活用することで、スムーズかつ効果的なビルの売却を進めることができます。
以上の理由から、ビルオーナーが所有するビルを売却する際には、管理会社に連絡することが非常に重要です。管理会社との協力関係を構築することで、より効果的なビルの売却を進めることができます。
5. ビル売却に発生する費用
五つ目のポイントは、「ビル売却に発生する費用」です。
保有ビルの売却をすることで、売却益を得ることができます。しかし、利益が出るだけでなく発生する費用もあります。具体的には、不動産会社への仲介手数料、譲渡所得税、法人税、消費税、印紙代などが挙げられます。ここから、さらに具体的にどの程度の金額が必要になるのかご紹介していきます。
仲介手数料
ビルの売買の諸手続きは複雑で、通常の場合不動産会社を介します。会社に仲介の依頼をすると、仲介手数料が発生します。その上限は宅地建物取引業法によって定められており、下記のように売買価格によって手数料が変動します。
売買価格による手数料の変動
- 200万円以下:売買価格の5%+消費税
- 200万円超400万円以下:売買価格の4%+2万円
- 400万円超:売買価格の3%+消費税
譲渡所得税
個人のビルオーナー様が不動産を売却した場合には、法人が自社ビルを売却する場合とはまた異なった税金がかかります。それは、売却価格が購入価格よりも高くなった際に発生する「譲渡所得税」です。
譲渡所得税
- 譲渡所得税 = 課税譲渡所得 × 税率
- 課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 特別控除
- 譲渡所得 = 売却価格 - 譲渡費用 - 取得費
また、税率はビルを所有していた期間によって異なります。
所有していた期間による税率
- 所有期間が5年以下:39.63%(住民税、復興特別所得税含む)
- 所有期間が5年以上:20.315%(住民税、復興特別所得税含む)
なお、法人がビルを売却した場合は、不動産の売却益+事業による利益が課税対象となり、法人税に含まれて算出されます。
消費税
消費税は、事業者が資産を譲渡する際に発生します。商品の販売はもちろん事業の付随する形で譲渡される資産も含まれるため、オフィスビルの売買も課税対象となります。ビルを所有する個人が投資目的で所有していたケース、テナントからの家賃収入を得ていたケースでも、ビルの売買には消費税がかかります。ただし、土地の売買は消費税の課税対象外です。
売買契約に関わる印紙代
ビルの売買には、印紙税も課税されます。印紙税は売却価格によって変動、下記のように売却価格が大きいほど印紙税も高額になります。
※印紙税は収入印紙を購入、契約書に収入印紙を貼りつけ、その印紙を消印する方法で納付されます。
売却価格/印紙税
- 1,000万円超~5,000万円以下の場合/1万円
- 5,000万円超~1億円以下の場合/3万円
- 1億円超~5億円以下の場合/6万円
- 5億円超~10億円以下の場合/10万円
※2024年(令和6年)3月31日までに作成される場合の軽減措置。
また印紙税に加えて、各種領収書に貼付する印紙代も下記のように発生します。
売却価格/印紙代
- 1,000万円超~2,000万円以下の場合/4,000円
- 2,000万円超~3,000万円以下の場合/6,000円
- 3,000万円超~5,000万円以下の場合/1万円
- 5,000万円超~1億円以下の場合/2万円
- 1億円超~2億円以下の場合/4万円
- 2億円超~3億円以下の場合/6万円
- 3億円超~5億円以下の場合/10万円
- 5億円超~10億円以下の場合/15万円
抵当権抹消費用
売却予定のオフィスビルに(根)抵当権が残ってしまっているケースでは(根)抵当権の抹消登記後に引き渡す必要があります。この登記抹消に登録免許税(不動産1件につき1,000円)、事前調査費用、抵当権抹消確認費用が発生します。手続きは個人でも行うことができますが、専門家である司法書士に依頼することも可能。費用は1万5,000円~2万円程、時間や手間を省いて安心して任せることができます。
※ビルの購入時に金融機関との間にローン契約があった場合、金融機関は不動産を担保に抵当権を持つことになります。そのため、担保となったビルの売却時には抵当権抹消登記の手続きが必要になります。この手続きを怠った場合、物件を担保に新しいローンを組むことができないなどの不利益が生じるケースがあります。
ビル売却時の相談先
自社ビル・オフィスビルの売却をするには、相場の把握、適切な価格設定や税金の計算が不可欠です。
そのため売却を検討する際は、専門知識を持つプロフェッショナルに相談することが重要です。信頼できるパートナーとしては、資産運用系コンサルティング会社や不動産会社、その他税・不動産売買有資格者などがあります。以下にそれぞれ解説致します。
不動産会社
不動産会社は、ビルの売却においては相場に精通し、経験豊富な専門家として頼りになります。特に業界大手の会社は売買実績が豊富です。複数の会社に査定依頼を出し、慎重なパートナー選びを行いましょう。
コンサルティング会社
資産・財産のコンサルティング会社は、不動産の資産運用や有効活用に精通しているため、ビルの売却においても頼れる存在です。会社によって得意なコンサルティング分野が異なるため、Webサイトなどでサービス内容を比較・検討し、信頼できる会社を選びましょう。
各専門分野の有資格者
ビルの売却には、各専門分野の有資格者のサポートを受けることもできます。たとえば、税金について詳しい税理士、不動産価値の査定を行う不動産鑑定士、不動産の登記に関する書類作成や権利関係について相談できる司法書士など、自分が必要とする分野の専門家を選んで、ビルの売却を進めていきましょう。
売却契約後をスムーズに進めるには?
最後に、売却契約後をスムーズに進めるためにポイントを3つご紹介します。
1. 入居テナントへのオーナーチェンジの通知
売買契約が成立後にするべきことは、現在入居しているテナントへのオーナーチェンジの通知です。
何事も関係者には早めに通達する事は大切ですが、契約に関しては成立するまで非常に不安定なため、テナントが居た場合ははっきりとして事が伝えられる契約後までは内密にしておいた方が無難です。
2. 契約内容の維持と適切な報告
また通知の際には、オーナーチェンジや契約内容が維持される旨を適切に伝える必要があります。
一般的にはテナントが入居してる状態の売買契約に同意する買い手は、入居テナントと現オーナーとの契約内容に納得して契約しています。
そのため入居テナントからすれば、オーナーが変わっている点と賃料などの振込先が変わっている点以外の大きな変更点はない場合がほとんどです。
その点をきちんと把握していただけるようにしましょう。
3. 預かり敷金に関して
入居テナントから預かっていた敷金についても注意が必要です。敷金は買主に引き継がれるため、ご自身のために必ず売買代金に含めて交渉、契約後に気づいて後悔することがないように気を付けましょう。
以上3点をしっかりと把握して契約締結後もスムーズに対応しましょう。
まとめ
いかがでしたか?
自社ビルを売却するにあたって、メリットだけでなくデメリットがありました。
それらを把握して売却の方向に進む際抑えておくべき5つのポイント、その際に検討材料にするべき3つのサイト、発生する5種類の費用、3つの相談先をご紹介しました。
自社ビルや本社ビルといったオフィスビル・事業用不動産の売却には、時間と手間、そして専門的な知識と経験が必要となります。信頼できるパートナーと一緒に検討を進めていくことが大切です。
ポイントポイントを抑え、比較検討しながら飛躍と前進のための自社ビル売却、ビジネスの拡大・成功を目指してください。