アットオフィスのリーシングマネジメント(LM)
賃貸経営におけるつきない悩みのひとつが空室です。新築時はすべてが空室のところからリーシングが始まり、満室になり、一定数・一定期間で入れ替わるります。このサイクルが繰り返されます。新築からリーシング期間は長いと1年程度かけて満室になり、数年単位で徐々に空室期間は増えていきます。都心部の物件はオフィスも店舗もほぼ確実に90%前後の空室率で推移します。
その空室期間をできるだけ短く抑え、満室稼働に近付けるというのがリーシングの基本です。
このサイトをみている多くの貸主・仲介業者の方々には当たり前のことでもありますが、事業用不動産のリーシングマネジメント(LM)は下記の流れで進みます。
この3つのフェーズを詳しく見ていきたいと思います。
リーシング戦略をたてる
リーシングとはなにかというと、事業用不動産の賃貸を支援する業務をさします。 オフィスや店舗をはじめとした不動産の収益性を向上させるため、立地動向調査(マーケティング)、テナントの構成や賃貸条件の策定など、サービス業務を含む仕事をいいますが、大部分は『客付』といわれる貸室を埋めるための行為となります。
その流れは、以下で進みます。
- step 1
- step 2
- step 3
- step 4
マーケット調査を行う
空きが出たとき、需要と供給がどのようになっているか、まず確認しましょう。条件が原因で埋まらないのか、そもそも条件に関係なく埋まらないのか、その状況を把握することは非常に大切です。埋まらないときに、賃料を下げるという行為に走りがちですが、そもそものマーケットの状況を把握することで、値下げ時期を検討するのに必要な情報が得られることがあります。
一度賃貸条件を決めて募集を開始した後で、条件変更するというのは印象が良くないのと、先に出回った情報が独り歩きすることで、その後の客つけが難しくなるのは、避けたいところでもあります。
ですので、じっくりと時間をかけてマーケット調査・リーシングプランの作成をしたいところではあるのですが、マーケット調査から募集までかけた時間だけ、募集開始が遅れることになるので、空き室の予兆がある時点で、いつでも募集が開始できる状態というのを作っておきたいところです。
いつまでに成約するか
(いつから家賃発生を期待するか)
原則としては、1日でも早く空室を埋める。
空室が発生したとき、基本方針は1日でも早く埋めるという考えで対応するのが良いと思います。1円でも高く埋めるという目標も、状況により発生しますが、それでも決まらないということには意味がないので、成約するターゲットとなる日付を決め、その日に合わせた条件設定をどうするかということになります。
一日でも早く埋めるというのは、焦って埋めるのとは違って、リーシング活動をする中で引き合いが増えれば、所有者として、用途・与信・賃料・家賃発生時期などを選択できる幅が広がりますので、長期的な視野でビル経営ができます。焦って安くしたり、意味もなく与信を緩くすることは、避けたいところです。 できるだけ高く・長く・安心できる入居者を選択できれば、再度空いてくるリスクも軽減されます。
一日でも早く埋めるためには、一日でも早く募集を開始する。
まず空室が発生したと確定するのは、入居テナントから解約申込や相談がなされた時点です。よく、原状回復が終わったら募集をするというスタイルをとるオーナー様もいますが、できるだけ早く募集をすることを考えると、解約と同時、もしくはそれ以前が理想と言えます。1日募集が早ければ、1日契約までの可能性が早くなるわけです。
また、市況が悪くなってくるとフリーレントの期間も伸びてきます。賃料が全く入ってこなくなるという期間が増えることを短くするためにも、動き出しを早くするということは効果的でもあります。
また、退去予定のテナントと良好な関係を築けていると、入居期間中に内見をしてもらえることが多いので、原状回復工事などの退去条件の調整を行いながら、内見協力のお願いをしたりすることもお勧めできます。最近、退去テナントからよく相談される、次のテナントを見つけてきたら、居抜きで出ることはできるかという相談も、入居中の内見をする中ではウィン・ウィンの話になるので、検討されてはどうでしょうか。
テナント構成を検討する
テナント構成のまとまりは、ビルの価値を高めます。ビルの竣工時はどのビルも、コンセプトがあることが多いと思います。オフィスビルにはオフィステナント、クリニックビルにはクリニックが入居して欲しいのは、貸す側として は当然で分かりやすくあります。
ビルは必ず老朽化し、初期のコンセプトでビルのリーシングが困難になる時期が来ます。自身のビルのコンセプトについても、世の中の変化に合わせていくというのも大切なことなので、テナントの構成をどうしていくかについても、空きが出たタイミングで改めて考えて、必要であれば変えていくということで、レントロールの最大化が図ることができると思います。
何棟か持っている所有者・管理会社であると、状況の変化を察知し、ビルのコンセプトを変化させていくことができますが、市況を正確に把握ができない場合、高くしすぎたり、逆に安くしすぎたりというのがあります。賃貸仲介会社へのヒアリングが重要になってきます。実際には、会社単位の実績だけでなく、担当してくれる営業の経験値も影響してきます。
募集条件の策定で大切なことは、1日でも早く埋める、なおかつ1円でも高い家賃で契約することです。実はこの行動が、入居者に比較的リーズナブルな家賃設定になることが多いというのもあります。需要と共有のバランスがあり、かつ同じ物件が2つとないビルという特性は、バランスの良い物件が選ばれることが多いのが特徴です。1日でも早く決めることと、1円でも高い家賃で決めることは基本的には矛盾しません。
『本当は、この用途に入ってほしいんだよな。』という用途がビルごとにあると思います。たいていのビルは竣工時コンセプトを作って、どのようなビルにするか決めます。オフィスビル・クリニックモール・飲食店ビルなど1つの業種、もしくは多彩な業種。空きが増えると、コンセプトにずれるテナントを入れなくてはいけなくなることが増えます。
この混ざるというのが、テナントリーシングでは次の空きが出たときにボディーブローになります。テナント構成は、ビルの価値を左右するため、単フロアーの家賃の高さで無理して入れてしまうということがあとで、ビル全体の価値を下げることがあります。用途だけではなく、与信の緩いテナントが入ることで、他テナントが懸念するケースもあります。
逆に、ベンチャーに優しいビルといった、ブランディングも存在していて、出世ビルみたいな呼ばれ方をするビルもあります。
テナント構成は、1フロアーの賃料ではなく、ビル全体の収益性にかかわる大きな問題なので、新しく空室が出る場合や、ビルの空きが目立ち始める時期に、どのようなコンセプトにビルを変えていくか、不動産業者と相談し、決めていきたいところです。
条件を決める
募集条件は市場の中で相対的に高いと案内が増えないですし、安すぎると、貸主の不利益が生じます。決まらないと安くしたくなるものですが、競合の状況などを正確に把握し、どのような条件であれば、案内が増えるか、慎重に検討を進めるべきではありますが、時は金なりでもあり、できるだけ早く決定できる準備を、空き室が出る前からしておくことをお勧めします。
家賃は需要と供給で決まっていて、家賃を下げることは成約可能性を確実に高めます。特に、都心部の物件は空室率が常に9割前後であり、需要と共有のバランスが著しく偏っている状態というのはあまり起きにくいので、値下げをすれば借り手が現れるわけです。郊外の需要が少ないエリアではそうはいきません。安くしても、需要が一切なければ契約に至らないわけで、需要が一定で現れるのか、1年の中で季節要素があるのか、年単位で再開発や需要増の要因が生まれるのかはしっかりと見定める必要があります。
自身の見立てが正しいかは複数の仲介業者の意見をもらうことができると良いですが、正確な情報を持っていない会社が何となくで話していることも少なくないので、できるだけ自身の空室に近い物件の契約実績が多い仲介業者の意見を中心に検討してください。
上記の例では、アットオフィスの社内で複数名の意見を集めました。値付けは1名での判断では難しい場合が多いので、複数名で検討を行います。上記のような賃料設定が競争力があるかどうかを確認し、半数以上が厳しい評価をすれば、見直しを必要とすると思われます。逆に、満場一致を目指す必要はないと思います。満場一致を目指すとどうしても安めの価格設定となることが多いかと思います。
ビルの需要と供給はいつも動いていて、決まりやすい時期、決まりにくい時期というのがあります。コロナ禍で全てが埋まりにくいかと言うとそうではなく、中規模オフィスの比較的値ごろ感のある物件は埋まっています。
競合となる物件の引き合い状況や、全体の市況を総合的に判断し、作成した素案に不安がある場合、条件やターゲットに無理がないか、再検討を迅速に行う必要があります。その判断は、自身の信頼できる不動産業者と、2-3社の不動産業者からのヒアリングから総合的に判断できると良いと思います。
物件の募集は
- ・条件を決める
- ・募集図面、募集の一覧を作成する
- ・告知する
- ・内見立ち会い、条件調整
という流れになりますが、この一つ一つの精度が契約の成否に大きくかかわりますので、信頼できるPM会社が見つかったら、以下の記載項目を丁寧に行ってください。賃貸条件とリーシングスケジュールを考えるとき、同時に考えるわ けですが、スケジュールから賃料を推定するという考えをお勧めします。スケジュールの期限を重視する場合と、時間はかかっても特定業種のリーシングをしたい、もしくは、賃料設定を高くしたいというような、スケジュールを原則重視しないスタイルが実際にはありますが、多くのケースで半年程度では決めていきたいということが多いと思います。
上記条件をもとに、先ず現実的に誘致可能な条件ラインかを複数業者に確認の上、どのような借主を誘致するのか、そのためには誰に何をしてもらったらいいのかというのが決まっていきます。条件のあたりをつける中で、様々な事情を整理する必要が出てくると思います。物件を買うとき設定したレントロールやローンの発生時期や金額もあるかもしれません。
テナント募集の実施
- step 1
- step 2
- ヒント
図面の作成
物件を知らない人たちに、物件の良さを知ってもらう。そのため、募集図面と募集一覧を作成しましょう。
募集図面の作成で大切なことは、借主にとって、良さそうな物件だなと伝わることと、紹介する業者にとって、紹介したい物件と思ってもらうことです。
写真をキレイにとって、コメントを登録して、条件を正確に記載、 図面をきれいに作り、分かりやすい地図を作るなど、一つ一つの精度を高めていくことで、物件が持つ魅力が伝わる資料が作成できます。
アットホームで条件を入れると自動作成できる機能もありますが、強調したいメリットを伝えるというのは難しく、できればオリジナルで作成する方が成約までは早いと思います。場合に応じて使い分けをすると良いと思います。
入居中の物件を募集する時、入居中の為室内の状態がイメージできないということがよくあり、以前の募集の写真を使いたい場合がありますが、ないケースもあります。前回引き渡し状態の写真をきちんと保管しておくことで、次回の募集も簡単にスタートすることができます。
またマイソクの作成のポイントは後日記載したいと思っていますが。ここでは割愛します。
告知
事業用不動産のリーシングの成否は、条件の設定と告知にかかっています。市況にあった条件設定ができたら、あとは多くの借主となる候補者に物件を知ってもらうことです。
借り手となる入居希望者はどうやって物件を探すでしょうか。
- ① 歩いて探す
- ② ネットで物件を検索する
- ③ 知り合いの不動産業者に声をかける
実際には、③の知り合いの業者に声をかけるが最も多いかもしれませんが、同じくらい多いのが、②の物件をネットで探す行為です。①の歩いていて見つかったというのは、割とレアですがあるので、看板についても物件の大きさがイメージできる工夫をしておくと問い合わせが増えたりします。
賃貸仲介業者はどうやって
物件情報を集めているか
私たちも、直接ホームページで掲載をして借主向けの告知を行いますが、多くは業者様を経由して契約をいただいています。なので、賃貸仲介業者への告知がリーシングの成否に大きく影響することを理解しています。私たちは、大手・中堅不動産会社の営業毎のリストを正確に近い形で作成しています。また、不動産営業マンの連絡先だけではなく、物件情報を登録する担当が各社いますので、その窓口の方に情報をお伝えすることができるように、その窓口の把握を行っています。
賃貸仲介業者は
- アットホーム・レインズの業者間ネットワークを活用
- 中堅大手の不動産会社は、一覧と呼ばれる管理系不動産会社の募集物件一覧を独自のデータベースに登録し、顧客に提案、WEBで配信
という方法で物件情報を集めています。
なので、
- ❶アットホーム・レインズに登録
- ❷大手・中堅不動産会社に情報を配信
すれば、9割以上の業者に情報が伝わっていると考えてよいと思います。②の業者は、数十社の1000人を超えるリストになると思いますが、PM会社は不動産会社のリストを作成しているところも多いと思います。我々もかなり正しいリストを日々更新する努力を行っており、契約実績の大いにPM会社の多くは、仲介業者の営業マンのデータを蓄積しています。
WEBの掲載を希望しないケースを除いて、各社サイトにも掲載されます。営業マン毎の顧客に対しては、営業次第になるので、営業マン直での告知も定期的に行うことで、紹介数が増えますので、仲介会社全体のデータベースに登録し、営業マンにしっかりと情報が浸透していくために、メールの配信などをしっかり行っていくことが求められます。アットオフィスでは、一覧と更新情報をできるだけ早く伝えたいと思っています。
申込・契約・お引越し
- step 1
- step 2
内見立会い・申込
ここまで来ればもう一息です。ですがまだ油断は禁物です。プロモーションの成功は案内に現れます。案内が増えたなら、もう契約まで間近ということで間違いありません。
内見立ち合いを自身で行う場合は、物件の魅力を自身で伝えるということも良いことだと思います。当然、リーシング会社も行ってくれます。しかしながら、もう一歩ですが、あと一歩足りないということがあります。
案内があるが決まらない。その理由がありますので、案内をしてくれた仲介会社にどのような理由で検討に進まなかったかを聞いてみると、競合している物件との差に気が付くことが多いです。その情報をもとに、条件を調整していくことが成約につながる場合が多いです。契約に至るまで、油断しないことが必要です。
案内後の与信調査と条件調整において最も大切なことは、条件より与信ということです。賃貸借契約における、借主の権利は貸主より多くが認められており、入居後問題が発生したとしても退去を要請することは簡単なことではありません。入居後の問題が起きにくい、問題が起きても計決する手立てがあるか、というのを判断軸に、条件と合わせて入居審査をしていくといいと思います。
賃料の保証会社が通ればあとは気にしないというケースもありますが、一通り役員構成だけでも反社チェックをかけることで防げるものもあります。ここでは記載できない内容ですが、いくつか入居時に確認をしておくと、滞納家賃の回収がしやすくなったり、退去の話し合いがしやすくなるということがあります。
与信調査は不動産会社に丸投げせず、自身でも判断をするということが必要です。
契約・物件の引き渡し
与信調査・条件調整が終わり、重要事項説明・契約書の取り交わしが終わった後、賃貸借の始まりである、鍵の引き渡しが行われます。
鍵の引き渡しをするときに、住宅では必ず行うことですが、相互に引き渡し状態の確認をすることをお勧めします。オフィスの場合、そこから内装を入れることが多く、床壁天井を含む全面リニューアル済みの原状回復工事が一般的なため、確認が不十分になってしまうことがありますが、良いこととは言えません。
退去時の原状回復工事の段階になって、トラブルに発展するということがあります。また、居抜きや部分的な設備譲渡がある場合など、入居中の設備トラブルにより、その壊れた設備の修理はどちらが行うかなどの問題が発生します。引き渡し状態はできれば写真に残し、オーナー所有の設備以外の、諸設備についてはその所有権についての記載を重要事項説明と契約書に記載することで、問題を防ぐことができることがあります。
説明が不足して起きるトラブルによって、オーナーとテナントの関係が悪化するというケースがありますが、入居時にしっかりと説明できていれば、そのような問題が起きることもありません。このような小さな負の積み重ねがテナントとの信頼関係を毀損して、退去に至ったり、より大きなトラブルの引き金になったりすることもあります。
アットオフィスもリーシング協力・PM/BMのお手伝いしています。早く・できるだけ高くリーシングするということが求められる優先課題であるということは理解しつつ、長期のテナント構成を考え、ビル経営のお手伝いができる用の心がけています。
上記は一般的なイメージでしたが、アットオフィスでは特殊なリーシングの協力も行っています。よく相談があるのが、クリニックのみの利用用途というものや、賃料単価は下げられないというケースです。オーナー様の状況に合わせて、柔軟な発想でリーシングをすることで、選択肢を増やすことができると思います。空室にお困りの際は、気軽に相談ください。