オフィスの原状回復工事とは?
工事の範囲や費用節約のコツをご紹介
オフィスを借りる際に知っておきたいのが、オフィスの原状回復工事です。退去時にオフィスを借りた当初の状態に戻すために行われる工事であり、その費用や範囲について正確な理解をすることが重要です。
本記事では、オフィスの原状回復工事に関する詳細な情報を提供します。費用相場や工事の注意点、節約のコツなど、オフィスを借りる際に知っておくべきポイントをご紹介します。オフィスの移転や契約を考えている方は、ぜひ事前にこの記事を参考にしてください。
オフィスの原状回復とは?
オフィスの原状回復工事は、退去時に借り主が入居前の状態に戻すために必要な工事です。この工事は、居住用賃貸の原状回復工事とは異なる点があります。
居住用賃貸では、通常の損耗や経年劣化による補修費用は賃貸人が負担しますが、通常の使用を超える損耗に関しては、原状回復の費用を借り主が負担する義務があります。例えば、喫煙による汚れや結露を放置したことによるカビやシミなどは、原状回復工事の対象となります。
また、オフィスの原状回復工事は契約期間内に行われます。居住用賃貸の場合、基本的に原状回復工事がなく、退去日と契約終了日が一致することがほとんどです。一方で、オフィスをはじめとする事業用途の物件は、原状回復工事を行い元の状態に戻すところまで、家賃が発生します。
オフィスの原状回復工事の範囲
原状回復しなければならない工事の範囲は、主に以下の5項目からなります。
- 解体・撤去
- 壁・床など
- 天井設備
- 電気・電話関連
- クリーニング
具体的な工事内容や費用は契約書や施工業者との打ち合わせによって異なる場合もあります。そのため、事前にしっかりと確認し、お互いに納得した上で工事を進めることが重要です。
解体・撤去
解体作業は、建物内のLGSやパーティションなどの壁を撤去したり、造作物を解体したりするプロセスを指します。
この作業は騒音が大きくなるため、ビル管理会社によって解体日の制約がある場合もあります。また、配線などのために壁や床に穴を開けていた場合は、補修が必要とされることもあります。
さらに、入居している期間中に運び入れた設備がある場合は、それらの撤去も対象となります。そのため、更衣室や倉庫など、社員しか利用しないエリアに置かれた什器なども確認しておく必要があります。ただし、移転先でこれらの什器を活用することで、廃棄にかかる費用を節約できる場合もあります。
壁・床など
工事の対象には、壁紙や床のタイルカーペットの貼り替えが含まれます。また、塗装作業も一般的な対象範囲に含まれることがあります。具体的には、天井、壁、建具、窓の枠周りなどが塗装すべき範囲となります。ただし、ドアや窓の枠が良好である場合は、工事の必要がないこともあります。
また、塗装工事では塗料の臭気が問題となることがあります。しかし、最近では臭いが少ない塗料も利用されており、その点でも環境への配慮が進んでいます。
天井設備
照明の管球交換や空調機器、非常誘導灯などの防災設備の取り扱いが必要となります。特に間仕切やLGSを設置したことによって、空調機器や防災設備が増設または移動された場合、原状回復ではこれらを元の場所へ戻す必要が生じます。
電気・電話関連
電気や通信に関する施設を正しく撤去することは、物件を入居時の状態に戻す上で欠かせない作業です。
具体的には、電気や電話線、LAN線、そしてOAタップの撤去が必要とされます。特にOAフロアを導入している場合は、OAタップの撤去も欠かせません。これら縦配線の工事や弱電配線(電話線、LAN線、OAタップ)の撤去は、一部では異なる工事区分として扱われることがあります。そのため、適切な手順を踏むために事前に確認することが重要です。
クリーニング
照明器具、窓やサッシ、ブラインドなどのクリーニング作業が発生します。このようなクリーニング関連の工事は、入居者の使用によって生じた汚れや付着物を除去し、建物の清潔さや美観を回復する役割を果たします。
オフィスの原状回復のスケジュール
スケジュールは、予め計画して進めることが重要です。以下では、時期ごとに具体的なスケジュールを紹介していきます。
- 6ヶ月前:契約内容の確認
- 5ヶ月前:業者による現地調査・見積もり依頼
- 4ヶ月前:費用とスケジュールの確認
- 3ヶ月前:工事の発注
- 1ヶ月前:工事開始
- 退去当日:引き渡し
これらは大まかなスケジュールです。計画的に進めることで、効率的かつ円滑な工事が可能となります。
6ヶ月前:契約内容の確認
6ヶ月前の段階では、契約内容の確認が必要です。この時期には、賃貸契約書を詳細にチェックし、借主が負担しなければならない原状回復の範囲を明確化する必要があります。
契約書には通常、具体的な原状回復作業や負担範囲に関する規定が含まれています。この段階で契約書を確認することで、将来的なトラブルを防ぐことができます。
5ヶ月前:業者による現地調査・見積もり依頼
この段階で必要なステップは、業者による現地調査と見積もり依頼です。特に、退去予定日から5ヶ月前ぐらいにはこの手続きを進めることが望ましいです。
この時期に業者に見積もり依頼を出すことで、検討期間や作業スケジュールの確保ができます。まずは、複数の業者に連絡し、彼らの現地調査と見積もりを依頼してください。
4ヶ月前:費用とスケジュールの確認
4ヶ月前になると、見積もり内容を再度確認し、スケジュールの調整を行う必要があります。見積もりの内容に納得できない場合は、再度見積もりを依頼するようにしましょう。
まず、見積もり内容をしっかりと確認しましょう。どの部分にどのような工事を行うのか、内訳が明確であることが重要です。特に不明点や疑問点があれば、施工業者に質問して納得するまで詳細を確認しましょう。
また、スケジュールの調整も忘れてはいけません。工事開始日や完了日を再度確認し、予定通り進んでいるかどうかを把握しましょう。4ヶ月前ではまだ余裕があるかもしれませんが、計画通りに進めるためにも遅延の心配がないか確認しましょう。
3ヶ月前:工事の発注
見積もりに納得したら、引っ越し日から3ヶ月前を目安に工事の発注をすることが望ましいです。この時期に工事を依頼することで、十分な準備期間や余裕を持って作業を進めることができます。また、他の引っ越し準備やレイアウトの確認にも十分な時間を確保することができます。
1ヶ月前:工事開始
工事開始は通常1ヶ月前が適切とされています。この時期に工事を開始する理由は、スムーズな進行と効率的な作業を確保するためです。
退去当日:引き渡し
退去当日、オフィスの原状回復工事の最終段階が訪れます。この日は引き渡しの日となり、借主と貸主(オーナー)が立会いのもとで行います。一般的に、物件の状態を確認し、必要な修復や清掃作業を行って、引き渡し可能な状態にすることが求められます。
引き渡し当日には、賃貸契約書や付属品のチェックリストを参考にしながら、オーナーがトラブルや問題点を確認するために立会うことが一般的です。業者も同席し、専門知識を活かして技術面や工事の進捗状況をチェックします。
オフィスの原状回復にかかる費用の相場
費用の相場としては、小規模ビル(個人オーナーなど)では、通常はクリーニングのみで済むケースがほとんどです。その場合、坪単価は2万円程度となります。
一方、10~50坪程度のオフィスでは、、坪単価は2万円から5万円程度とされています。具体的に言えば、例えば30坪のオフィスであれば、60万円から150万円程度が費用として見込まれます。
大規模なオフィスビルや50坪以上の場合、原状回復にはより多くの費用がかかることがあります。このような場合では、坪単価は5万円から20万円程度が相場とされています。例えば100坪のオフィスであれば、500万円から2,000万円以上も必要となることもあります。
原状回復費用を節約するには?
費用を節約するために以下の3点を考慮することが重要です。
- 契約内容の確認をする
- 複数の工事業者に見積もりを依頼する
- 居抜き物件として引き渡せるか交渉する
これらの手法を活用することで、費用を節約することが可能です。契約内容や物件の状態によっては、コスト削減が難しい場合もありますが、できる限り事前の確認と交渉を進めることで、負担額を最小限に抑えるようにしましょう。
契約内容の確認をする
保証金は、原則的に借主へ全額返還されるものですが、その金額を原状回復の費用に充てることができるかどうかを確認する必要があります。このような確認作業を通じて、保証金で原状回復費用を相殺させることが可能です。
具体的には、賃借契約書や条件に保証金の差し引きや返還に関する取り決めが含まれているかどうかを確認しましょう。一部の契約では、保証金の一部を原状回復費用として使用できることが明記されている場合もあります。また、保証金の相殺に関して疑問点が生じた場合は、オーナーや管理会社に直接問い合わせることもおすすめです。
複数の工事業者に見積もりを依頼する
複数の工事業者に見積もりを依頼することもおすすめの方法です。なぜなら、適切な比較と検討を行うことで、費用の節約に繋がるからです。
ただし、安い見積もりだけに騙されることは避けましょう。一部の業者は低料金で見積もりを提示し、その後に追加料金を請求するケースがあります。それを防ぐためにも、信頼できる業者選びが重要です。
また、相場と比較しながら見積もりを検討することも大切です。相場を知らないまま決定してしまうと、実際より高い費用を支払ってしまう可能性があります。他の業者の見積もりと比較して適正価格かどうか確認しましょう。
安価な見積もりだけでなく、信頼性や施工実績も考慮に入れることも忘れてはいけません。信頼できる業者は品質やスピード面でも優れていることが多く、安心して任せることができます。
居抜き物件として引き渡せるか交渉する
居抜き物件として引き渡せるか交渉することで、費用を節約することができます。居抜き物件とは、そのままの状態で物件を引き渡す選択肢です。
通常の原状回復では壁紙や床材、配線などを撤去し、元のスケルトン状態に戻す必要がありますが、居抜き物件ではクリーニングなどの簡単な作業だけで引き渡すことが可能です。このような方法を選ぶことで、費用を大幅に削減することができます。
ただし、居抜き物件として引き渡すためには、オーナーの承諾が必要です。オーナーが居抜き物件の提案に賛成してくれれば、借主側は原状回復工事費用を支払う必要がありません。
オフィスの原状回復を考える際の注意点
オフィスの原状回復を考える際の注意点として、以下の3点を紹介いたします。
- スケジュールに余裕を持つ
- 工事可能な時間や曜日を確認しておく
- なるべく業者の繁忙期を避ける
これらのポイントに留意することで、スムーズかつ効果的な原状回復工事を実現することができます。
スケジュールに余裕を持つ
事業用不動産では、契約期間内に退去日までに原状回復工事が行われる必要があります。これは、入居前の状態に物件を戻すための作業であり、時間を要することがあります。
居住用の物件では、退去日と契約終了日がほぼ一致するため、基本的に原状回復工事は不要です。しかし、オフィスや事業用途の物件では、もとの状態に戻すための工事が必要です。
ただし、オフィスの規模や状態によっては、工事に長期間がかかる場合もあります。そのため、退去日までに工事が終わらない場合、追加の賃料支払いが発生する可能性も考慮すべきです。
特に新年度や決算期などの特定の時期は、オフィス移転を検討する企業が増えるため、工事業者の予約状況が混み合うことがあります。そのため、工事を依頼しても即座に着手してもらえない可能性もあります。
これらの事情を踏まえて、オフィスの原状回復工事を計画する際には、施工業者とよく相談し、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。これにより、予期せぬトラブルや追加費用の発生を減らすことができます。
工事可能な時間や曜日を確認しておく
工事可能な時間や曜日について確認することも重要です。オフィスの場所や工事箇所によっては、周囲への影響が生じる可能性があります。そのため、工事ができる時間や曜日が制限されることもあるのです。
隣接するテナントや周辺住民への騒音や振動などが問題となる場合、オーナーや管理者は作業時間を制約する必要があります。特に建物内部で行われる場合でも、隣接するテナントへの配慮が必要であり、深夜や早朝の作業は避けるべきです。
また、工事箇所や規模によっても工事可能な時間帯が異なります。特に大規模な改修工事では、一時的にオフィスを閉鎖することも考えられます。そのため、できるだけ多くの作業を休日や祝日に集中させることで周囲への影響を最小限に抑えることが求められます。
なるべく業者の繁忙期を避ける
最後に注意すべきポイントとして、業者の繁忙期を避けることが挙げられます。
特に新年度や決算期など、企業の移転や引っ越しが集中する時期は1~3月と9~12月です。この時期は施工業者や引っ越し業者も多くの依頼を抱えており、予定調整が難しくなる可能性が高まります。
繁忙期に作業依頼をすると、業者の手配が難しくなるだけでなく、作業実施まで時間がかかる場合もあります。
そのため、特別な理由がない限り、できるだけ企業の移転が多い時期を避けてスケジュールを立てることが望ましいです。
オフィスの原状回復は、契約内容をよく確認し余裕を持って計画を立てよう
本記事では、オフィスの原状回復工事について詳しくご紹介しました。オフィスの原状回復工事は、契約内容をよく確認し、余裕を持って計画を立てることが重要です。
また、スケジュールや注意点、費用節約のコツを押さえながら工事を進めることで、円滑に工事を終えることができます。オフィスの原状回復工事を考える際には、本記事の内容を参考にしてください。