オフィスに防音対策を取り入れるメリットは?
具体的な対策方法とともに解説
オフィスの環境整備は、従業員の生産性やストレスレベルに大きな影響を及ぼします。特に音の問題は見逃されがちですが、実際には非常に重要なファクターです。このコラムでは、オフィスの防音対策がなぜ必要なのか、具体的にどのような対策をとれば良いのかをご紹介します。防音対策を施すことで得られるメリットや、具体的な対策方法について詳しく解説します。オフィスの環境改善や、移転先のレイアウトや内装の検討の際にぜひ役立ててください。少しの工夫で、業務効率が格段に上がるかもしれません。
オフィスの防音対策が重要な理由
オフィス環境における防音対策は、単に音の問題を解決するだけでなく、業務効率や従業員の満足度にも大きな影響を与えます。ここでは、防音対策がなぜ重要なのか、その理由を詳しく解説します。
業務に集中するため
オフィス環境が騒がしいと、従業員が業務に集中することが難しくなります。集中力の低下は生産性の低下にも直結します。そのため、防音対策をすることによって、静かで集中しやすい環境を作り出すことが重要です。騒音が少ないオフィスは、従業員がより効率的に仕事を進められるだけでなく、ストレスも軽減されます。
情報漏洩を防ぐため
オフィスでは、重要なビジネス会話が頻繁に行われることがあり、個人情報や機密情報が含まれることも多いです。もし個人情報や機密情報が他社に漏洩した場合、企業の信頼性や顧客からの評価を損ねる可能性があります。また、個人情報保護法など法的規制も存在し、その遵守は企業活動において極めて重要です。オフィス内での会話や電話を通じて重要な情報が漏れるリスクを回避するためにも、防音対策が必要です。
Web会議等を円滑にするため
近年、Web会議はビジネスコミュニケーションの不可欠な手段として急速に普及しています。しかし、オフィス環境における騒音問題は、Web会議の円滑な進行を阻害する可能性があります。
Web会議で複数の参加者が同時に話す場合、声が壁や天井から反響し、聞き取りづらい状況や通信の乱れが生じる可能性があります。また、ハウリングが発生することで、音声が歪んで聞こえたり、会議の進行が中断されることがあります。
オフィスの防音対策を実施することで、Web会議による円滑なコミュニケーションを実現し、スムーズなやり取りが可能となります。また、騒音が軽減されることで、他のオフィスメンバーや周囲への影響も最小限に抑えられます。
オフィスにおける音問題の原因
オフィス内で発生する音問題は多岐にわたりますが、主な原因を理解することで効果的な対策を講じることができます。ここでは、オフィスにおける音問題の具体的な原因について、以下の4種類を挙げて解説します。
- 振動
- 反響
- 音の通過
- 透過
振動
振動は、オフィスの床や壁から伝わる音の一因です。直接的な衝撃や機器の振動が、音として周囲に広がります。例えば、プリンターやコピー機などの機器が動作しているときに発生する振動がオフィス全体に伝わると、人の集中力を削ぐ原因となります。
機器や家具から発生する振動が、建物の構造を通じて広がることがあります。例えば、コピー機や大型プリンターが動作するときには机や床が微妙に震えたりします。この振動は、壁や床を通じて他の部屋に伝わり、音となって感じられます。また、足音や椅子を引く音なども振動として伝わり、特に静かな環境では大きな騒音として感じられます。振動を最小限に抑えるためには、防振材の使用や機器の配置を見直すことが重要です。
反響
オフィス内での音が壁や天井に反射し、何度も行き来することで生じるのが反響音です。このハウリング効果は、音がこもって聞こえるため、会話や音楽が聞き取りにくくなります。特に広いオフィスではこの問題が顕著に現れます。
反響音は、音が壁や天井に反射し、元の音と干渉することで発生します。例えば、大きな部屋や高い天井を持つオフィスでは、反響が強くなりがちです。これは、同じ音が何度も跳ね返るためで、結果的に音がこもって聞こえたり、他の音と混ざって聞き取りづらくなる原因となります。反響音を抑えるためには、吸音材の設置や家具の配置を工夫することが有効です。特に壁や天井に吸音パネルを取り付けることで、音の反射を抑えることができます。
音の通過
音の通過は、オフィス内での音が隣の部屋や廊下、さらには外部に漏れ出す現象を指します。これは、壁やドアの遮音性が低いことが主な原因です。
オフィスの壁や仕切りが薄かったり、適切な遮音材が使用されていない場合、音は容易に通過します。例えば、会議室で行われている会話が隣の部屋に筒抜けになってしまうことがあります。これにより、機密情報が漏洩するリスクが高まり、また集中力の妨げにもなります。
特に問題となるのは、一般的な石膏ボードや軽量なパーティションです。これらは音を遮る能力が低く、高音域の音はもちろん、低音域の音も通過しやすいです。また、ドアや窓のすき間も音の通過を助長する要因の一つです。これらの隙間から音が漏れやすく、自分たちが発した音が外に漏れるだけでなく、外部からの雑音も内部に侵入してきます。
音の通過を防ぐためには、壁やドアの遮音性を高めることが必要です。例えば、二重壁や吸音材を使用した壁を設置する、遮音ドアを採用する、防音シールやガードを使用してドアや窓の隙間を埋めるといった具体的な対策が有効です。
透過
音が物体を通り抜けて伝わることを音の透過と言います。オフィスの壁や天井が薄い場合、音の透過が起こりやすくなります。これを防ぐためには壁や天井の素材や構造を見直し、適切な防音材を使用することが重要です。
音の透過は、物理的な障壁を通り抜けて音が伝わる現象です。一般的に、薄い壁や天井は音を透過しやすいため、防音対策が不十分な場合、隣の部屋の音や上下階の音が聞こえてしまいます。壁や天井の透過性を低減するためには、壁を二重構造にする、吸音材や遮音材を使って構造を強化する、天井に防音パネルを設置するなどの対策が考えられます。特に、オフィス全体の音響環境を改善するためには、建物の構造自体を見直すことが効果的です。
(参考)騒音の基準
オフィス環境における騒音の基準は、一般的には40dB~60dB程度とされています。これ以上の騒音があると従業員の業務に支障が出るため、防音対策が必要です。特に集中が必要な作業や会議中には、これらの基準を参考にして適切な防音対策を行いましょう。
騒音レベル (dB) |
騒音の種類 | 影響 |
---|---|---|
30~40dB | 静かな書斎、ささやき声 | 非常に静かな環境。集中しやすいが、少しの音も気になる方には対策が必要。 |
40~50dB | 図書館、静かなオフィス内 | 一般的には快適なレベルだが、長時間の会議や集中作業では対策を検討。 |
50~60dB | 普通の会話、オフィス内の雑音 | 軽度の音問題が発生。集中力が欠ける可能性があり、防音対策を検討する価値がある。 |
60~70dB | 活気あるオフィス、交通量の多い道路 | ストレスや疲労感を感じやすい。業務効率に影響を及ぼすレベルであり、速やかな対策が必要。 |
70dB以上 | 工事現場、大きな交通の騒音 | 業務環境としては非常に悪く、健康にも影響が出る可能性が高い。防音対策は必須。 |
この表を参考にしていただくことで、オフィス内の騒音レベルを評価し、どの程度の防音対策が必要かを判断するのに役立ててください。
オフィスの防音対策に必要な4つの要素
適切な防音対策を講じるためには、いくつかの条件を満たすことが必要です。ここでは、効果的な防音対策を実現するための4つの重要な要素について解説します。
- 遮音
- 吸音
- 制振
- 防振
遮音
遮音とは、音を物理的に遮るための対策です。壁やドアを高遮音性の素材で作成することで、隣の部屋や外部からの音を遮ることができます。例えば、特殊な遮音材を使用した壁やドアを採用することで、音が通り抜けにくくすることができます。
吸音
吸音とは、音を吸収して反響を減少させる対策です。吸音材を壁や天井に配置することにより、音の反射を抑え、オフィス内での音のこもりを防ぎます。例えば、吸音パネルを使用することで、音の反響を減少させることができます。
制振
制振とは、物体の振動を抑えるための対策です。オフィスの床や壁が振動することで生じる音を減少させます。例えば、制振材を使用した床や壁を作成することで、振動が音として伝わることを防ぎます。
防振
防振とは、機器や設備からの振動を根本的に抑えるための対策です。コピー機やプリンターなどの振動を防ぐことで、騒音の発生を抑えることができます。例えば、機器の下に防振マットを敷くことで振動を吸収し、音の伝播を防ぎます。
オフィスで特に防音対策を施すべき場所
防音対策を講じる際に、特に重点を置くべき場所があります。ここでは、オフィス内で特に防音対策が必要とされる場所について詳しく解説します。
- 会議室
- 応接室
- 社長室
- 休憩スペース
会議室
会議室は重要な情報が交わされるため、防音対策が特に必要です。周囲からの騒音を遮断し、内部の会話が外部に漏れないようにすることが求められます。会議室に防音対策を施すことで、会議の質が向上し、機密情報の漏洩も防げます。
応接室
応接室も同様に、防音対策が必要な場所です。重要な商談やクライアントとの打ち合わせが行われる場所であり、会話の内容が外部に漏れると信頼関係に影響を与える可能性があります。応接室に防音対策を施すことで、プライバシーを守り、プロフェッショナルな環境を提供できます。
社長室
社長室は企業のトップが重要な決定をする場所です。社長が集中して作業や会議ができるように、防音対策を施すことが重要です。また、外部からの騒音を遮断し、機密情報を守ることも大切です。社長室に防音対策を施すことで、企業の運営が円滑に進むでしょう。
休憩スペース
従業員がリラックスできる休憩スペースも防音対策が必要です。休憩時間は従業員がリフレッシュするための重要な時間であり、騒音があるとリラックスすることができません。休憩スペースに防音対策を施すことで、従業員の満足度を高め、業務効率の向上にもつながります。
オフィスの防音対策の具体例
防音対策を進める上で具体的な方法を知ることで、効果的な対策を講じることができます。以下は、オフィスで実際に取り入れることができる防音対策の具体例です。
吸音性のあるパーテーション
吸音性のあるパーテーションやカーペットを使用することで、オフィス内の音の反響を抑えることができます。間仕切り工事によく使われるパーテーションとして、アルミパーテーション、スチールパーテーション、LGS(ライトゲージスチール)があり、それぞれに特徴があります。
アルミパーテーション
アルミは軽量で設置が容易です。剛性が高く音を反射するため、吸音効果はあまり期待できませんが、吸音材と組み合わせることで防音効果を高めることができます。モダンなデザインと手頃な価格が魅力です。
スチールパーテーション
スチールは重量があり、音を遮る性能が高いです。特に高音域だけでなく低音域にも効果があります。頑丈で防火性能も高いため、安全性が求められるエリアに適しています。その反面、設置には手間がかかり、費用も高めです。
部に吸音材を施工する事で、防音効果を高める事が出来ます。
LGS(ライトゲージスチール)パーテーション
LGSはスチールの中でも軽量で、高い剛性と防音性能を持ちますが、費用はやや高くなる傾向があります。
スチールパーテーション同様、内部に吸音材を入れることで、さらに防音効果を高めることができます。
また、さまざまな仕上げ方法が可能です。
これらのパーテーションを使い分けることで、オフィス内の音環境を改善することができます。
集中ブースの設置
防音ブースを設置することで、個々の従業員が静かに作業できるスペースを提供します。これにより、業務の効率が向上し、作業に集中することができます。集中ブースは、デスク一体型の個室ブースや、音を吸収する素材で作られたパーテーションタイプのものなど、さまざまな種類があります。従業員のニーズに合わせて選ぶことができます。工事をせずに設置できるもの、レンタルできるサービスなどもあるので、間仕切りをおこなうより費用面も抑えることができます。
サウンドマスキングの導入
サウンドマスキング技術を導入することで、オフィス内の背景音を一定に保つことができます。これにより、周囲の雑音を気にせず、作業に集中することが可能です。サウンドマスキング装置は、ホワイトノイズなどの背景音を発生させることで、他の音を意識させにくくする効果があります。特にオープンスペースでの利用に適しています。 音楽や環境音を流す事でも同様の効果が期待出来ます。
吸音パネル
壁や天井に吸音パネルを設置することで、音の反響を減少させます。これにより、オフィス内の音環境が改善され、コミュニケーションがスムーズになります。吸音パネルはさまざまなデザインがあり、インテリアとしても楽しむことができます。適切な配置と使用により、反響音を効果的に抑えることができます。
防音カーテン
窓際に防音カーテンを使用することで、外部からの騒音をある程度遮断できます。特に、通りに面しているオフィスでは、防音カーテンが役立ちます。防音カーテンは、厚みがあり、特殊な織り方や素材が使われているため、音を吸収しやすくなっています。さらに、遮光効果もあるため、部屋の温度調節にも寄与します。
まとめ
オフィスの防音対策は、従業員の集中力や生産性を向上させるだけでなく、機密情報の漏洩を防ぐためにも非常に重要です。音問題の原因を理解し、それぞれに適した防音対策を講じることで、効果的に防音を取り入れることができます。もし迷ったり、相場が知りたいという場合や、専門のアドバイスが必要な場合は、ぜひ アットオフィス内装チーム にご連絡ください。
当記事の監修者
髙嶋 秀一郎 | 執行役員 デザイン企画部部長
得意分野:オフィス入居工事(オフィスコーディネート業務)、商品企画
20代で飲食業界から転身、オフィスコーディネーターとしてのキャリアを積む。その後、オフィスのOA機器メーカーで事業開発・商品企画部門の責任者を務め、主に新規事業(新商品)の開発に取り組んできた。
2022年10月よりアットオフィスに入社、入居工事までを一気通貫で提案可能なスキームを構築。オフィスの工事に関わる不安要素を払拭し、お客様に満足いただけるコーディネートサービスを提供している。