オフィス家具のレイアウトはどう決める?
基準となる寸法とは
快適で効率のよいオフィスワークを目指すなら、家具の正しいレイアウトは欠かせません。
レイアウトを考えるとき、もっとも重要になるのが、間取りや動線、通路の幅などです。
これらがきちんと設置されていないと、全体としての作業効率が悪くなってしまいます。
ここでは、オフィスレイアウトを考える際、基準になるサイズや設置のポイントを解説します。
1. 適正なスペースを確保することが大事な理由
複数の従業員が働くオフィスでは、従業員ひとりひとりに適正なスペースが与えられていることが大切です。
仕事さえできればいいというものではなく、作業に集中しやすいことや、休憩時のオンオフが切り替えやすいなど、総じて働きやすい環境をつくるためには、適正なスペースが必要になります。
オフィスには法的な面積の規定が特にないため、物理的には狭いスペースであっても、複数人で共有しながら業務に取りかかることは可能です。
とはいえ、最低限1人に対して与えられるスペースは必要であるうえ、空間や音といった要素も働きやすいか否かに大きく関わってきます。
たとえば、他人のキーボードや会話などの音に、ストレスを感じたことはありませんか。
多くの場合、オフィスの面積そのものに原因があるというよりは、スペースを上手に使えていないことが原因です。
他人との距離が近いことで、ひとりひとりがイライラしたり集中できなかったりすれば、当然ながら、全体としての業務の効率が悪くなってしまいますよね。
そのため、オフィス面積はただ広ければいいというものではなく、スペースを工夫して使うことや正しいレイアウトが重要になります。
レイアウトを考える際には、設備や収納、間仕切りやインテリアなど、視界に入りやすいものをどこに置くかということばかりを意識しがちですよね。
しかし、オフィスの作業スペースで大部分を占めるのは、実は何もないスペースなのです。
日常あまり気にとめることもありませんが、意識して見ると、デスクとデスクの間や通路など、何も置かれていないスペースがいかに多いかがわかります。
その、いわば余白ともいえる空間こそが、働きやすいオフィスをつくるうえで重要なポイントになります。
このオフィスにおける余白が多ければ多いほど、その場にいる人は「快適だ」「過ごしやすい」と感じます。
限られたスペースを有効活用しようとするあまり、隙間なく家具などを配置するのは避けましょう。
無駄なくスペースを使うことはできても、全体としての過ごしやすさや働きやすさは損なわれてしまうからです。
では、快適で過ごしやすい空間とは、どのように作ればいいのでしょうか。
社風や働き方、オフィスの規模や従業員の人数によってそのスタイルはさまざまですが、どのようなオフィスであっても一定の基準が存在します。
基準を目安に、限られたスペースを有効活用することがオフィスづくりのポイントです。
2. 標準的な人のサイズ肩幅45cmを基準に
オフィスのレイアウトを考える際は、標準的な人の寸法を基準にして配置していきましょう。
たとえば、1日に何度も往復するようなメイン通路の場合、人と人が余裕をもってすれ違うことのできる幅があると、ストレスを減らすことができます。
一般的に、標準的な人の肩幅とされているのは45cmですが、それを2倍にして、さらに少しゆとりをもたせた120cm以上の幅があると理想的です。
3. デスクとデスクの間のスペースの基準
背中合わせの人と人の間を、ぶつからないようにそっと通るのは、ストレスを感じるものです。
また、デスクに座って作業しているほうも、誰かが通る度に椅子をずらすなど気を遣わなければならなくなり、作業を妨げる要因ともなります。
デスクで作業する従業員の幅はおよそ60cmですが、デスクから離れるときの動作には、およそ75cmのスペースが必要になります。
デスクとデスクの間隔が180cmあれば、快適度は100%です。
デスクから人が離れる動作を考慮して片側75cmのスペースが設けられていれば、人が快適に後ろを通ることができます。
デスク同士の間隔が150cmだと、快適度は90%になります。
両側ともデスクに座っている人が作業中であれば、問題なく後ろを歩くことができます。
片側の人がデスクから離れるような動作をした場合は、椅子も少し離れるため、横歩きをすればぶつからずに通れるでしょう。
デスク同士の間隔が140cmになると、快適度は80%になります。
両側とも作業中の場合なら、横歩きで通ることができます。
効率の良いオフィスワークを実現するために、最低でも快適度80%のスペースを維持するようにしたいところです。
それが難しい場合は、通る頻度が高いメイン通路はスペースを確保し、通る頻度の少ない通路は省スペース化するといったように、メリハリをつけて設置するとよいでしょう。
4. デスクと通路の間のスペースの基準
来訪者の多いオフィスや、人の動きが多い活動的なオフィスでは特に、デスクと通路の幅に余裕をもって設計を考える必要があります。
デスクで作業する従業員の業務や思考を妨げることなく、また、来訪者にも負担のない通路としては、180cm以上のスペースを設けたいところです。
デスクと壁の間隔が180cmあれば、快適度は100%です。
デスクで作業をしている人の後ろを、2人並んで通ることができます。
間隔が150cmになると、快適度は90%です。
休息している姿勢の人の後ろに1人が立ってPC画面などを見ていても、その後ろに別の1人が問題なく歩くことができます。
間隔が120mmになると、快適度は80%くらいです。
休息している姿勢の人の後ろを、1人が歩くことができます。
スペースに余裕がないという場合であっても、横向きになって歩かないと通れなかったり、作業中の人に声をかけ椅子を引いてもらったりという状況はできるだけ避けましょう。
逆に、管理職の席や打ち合わせスペースなど、後ろに人が通ってほしくないという場合もありますよね。
そういった場合には、壁との幅をあえて80~90cmほどに設定しておくとよいでしょう。
さまざまなケースで応用をすることができますね。
5. コピーコーナーのスペースの基準
業務内容によっては、コピーを取ることが多いオフィスもありますよね。
コピー機を使う頻度が高い従業員にとっては、コピーに割く時間もストレスなく遂行したいものです。
コピーをとる人のために必要とされるスペースはおよそ45cmです。
コピー機の脇を通過するなら、通路には60cmほどの幅が必要です。
従業員の動作を妨げないようにするためには、105cm以上あれば、コピーコーナーも快適になります。
コピー機と壁までの幅が105cmであれば、快適度は100%です。
コピーを取っている人の後ろを、問題なく通ることができます。
壁との幅が60cmほどなら、快適度は90%です。
標準的なスペースで、コピーしている人がいても、少し横にずれれば、後ろを人が通ることができます。
壁との幅が45cmになると、快適度は80%になります。
コピーを取るスペースと通路が兼用のため、コピーを取る人も横歩行になる必要があります。
6. オフィスのスペースは業務効率に直結
限られたスペースの中で、余裕のあるオフィス空間をつくるのは、現実的に難しいことも多いでしょう。
しかし、理想通りのレイアウトができなかったとしても、空間がもたらす効果や重要性を認識していれば、どの配置を優先しなければならないかおのずと理解できます。
たとえば、クライアントからの印象を大きく左右する来客用の応接スペースなどは、余裕をもってレイアウトすべき場所といえます。
一方、倉庫など人の出入りが比較的少ない場所なら、使用に差し支えのない範囲で、最小限のレイアウトで間に合うことも多いでしょう。
レイアウトだけでなく、小さめのデスクや椅子を選んだり、収納に優れた家具を取り入れたりという発想も自然に生まれますよね。
こういった工夫も、オフィスの空間を増やすために有効で、社内の移動効率や生産性を高めるのに一役かってくれるはずです。