オフィス移転で失敗したくない人へ
知っておきたい重要ポイントを解説
オフィス移転は企業にとって重要なイベントであり、成功すれば新たな成長のチャンスを生み出す一方、失敗すれば多くの課題が発生します。本記事では、オフィス移転の失敗しやすいポイントや、成功に導くためのヒントを紹介します。これからオフィス移転を考えている方々が、最良の選択をできるようサポートします。
オフィス移転を検討する理由
企業がオフィス移転を考えるタイミングには、さまざまな理由が存在します。事業の成長やコストの見直し、人材採用の強化やブランディングの向上など、移転の動機は多岐にわたります。いずれも企業の未来を見据えた戦略的な決断の一環です。ここでは、オフィス移転を検討する具体的な理由について詳しく見ていきます。
事業の成長、拡大
企業が成長するにつれ、現オフィスのスペースが手狭に感じることがあります。新しいプロジェクトや従業員の増加に対応するためには、広いオフィスが必要です。また、新規市場への進出やビジネスエリアの移動も、オフィス移転を考えるきっかけになります。
オフィスにかけるコストの最適化
働き方の変化に伴い、オフィスの広さが見直されるタイミングが訪れることがあります。リモートワークやフレックスタイムの導入により、かつては必要だったスペースが今では余剰になっていることも。こうした状況下で、家賃や光熱費の削減を目的にオフィス移転を検討することは、経費の効率的な管理に繋がります。移転によるコスト削減は、企業にとって大きなメリットです。
人材採用と従業員のエンゲージメント向上
人材採用を強化したいときや、従業員のやる気を高めたいときに、オフィス移転を検討することがあります。働きやすい環境は、社員のモチベーションを上げ、業績にも良い影響を与えます。新しいオフィスでより快適な空間を提供できれば、企業全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。
企業のブランディング
オフィスは、企業の顔ともいわれます。訪れる顧客やパートナーに与える印象は、オフィスの環境によって大きく影響されます。センスの良いデザインや便利な立地は、企業のブランドイメージを高めるだけでなく、企業のミッションやビジョンを具体的に示す場としても活用できます。オフィスが企業の価値観を体現することで、ブランドの一貫性が強まり、対外的な信頼や魅力が一層高まる要素となります。オフィス移転は、こうしたブランディングを進めるうえで非常に有効な手段です。
オフィス移転の失敗とは?
オフィス移転には多くの期待が伴いますが、進め方次第では目指していた成果が得られず、さまざまな問題が生じることがあります。ここでは、移転によって引き起こされる可能性のある主な失敗について見ていきます。
コストが想定より上がる
オフィス移転を進める際、物件の賃料などわかりやすい部分にはしっかりと予算を組み、確認しながら進めることが多いでしょう。しかし、オフィス移転には物件の費用だけでなく、内装工事費用や引越し費用、旧オフィスの原状回復費用など、さまざまな費用がかかります。何にどの程度かかるのか、どの程度かけられるのかを計画段階で十分に見積もっておかないと、最終的に予算を大きく超え、当初想定していたオフィス移転のメリットが薄れてしまう可能性があります。
業務効率が落ちる
移転後のオフィス環境が適切に設計されていない場合、業務効率が低下するリスクがあります。たとえば、現場の声を十分に取り入れずにレイアウトが決まると、部門間の距離が広がりコミュニケーションが不便になることや、動線が複雑で作業がスムーズに進まないことが起こります。また、管理者の視点だけで構築された環境が、実際に働く従業員には使いにくいものになることもあり、結果的に業務効率に悪影響を及ぼす恐れがあります。
従業員からの不満
オフィス移転の際には、従業員にも喜んでもらえるような新オフィスを作ろうと考えるはずです。しかし、その意図や移転の目的を十分に説明しないと、問題が生じることがあります。たとえば、通勤時間が増えたり、実務に合わないレイアウトが導入されたりすると、期待していた移転が逆に不満の要因となりかねません。こうした状況が続くと、モチベーションの低下や業務への悪影響が避けられなくなります。
顧客がアクセスしにくくなる
オフィス移転により、顧客にとってアクセスが不便になるケースが考えられます。以前は気軽に訪問できたオフィスが、移転後には遠くなったり、交通の便が悪くなったりすることで、顧客が足を運びにくくなる可能性があります。こうしたことがビジネスチャンスの減少につながるため、移転先の立地選びは慎重に行う必要があります。
物件選びの失敗と回避策
物件選びはオフィス移転の成否を左右する重要なステップです。立地や広さ、建物の外観や設備、さらには申込書類の準備など、見落としがちなポイントも多く、思わぬ失敗につながることがあります。ここでは、物件選びで陥りやすい失敗とその回避策について詳しく見ていきましょう。
立地選定の失敗
オフィスの立地が不便だと、従業員の通勤や顧客の訪問に支障をきたすことがあります。
関係者が多い場合、全ての希望を満たすのは難しいかもしれませんが、外せないポイントや優先度の高い条件を整理しておきましょう。また、仲介業者に状況を伝え、適したエリアを提案してもらうのも効果的です。
必要な広さについての誤算
オフィスの広さを誤って見積もると、スペースが不足したり、無駄に広すぎてコストがかさむことがあります。
物件を決定する前に、図面にレイアウトを落とし込む「テストフィット」を行っておくと安心です。これにより、実際の業務に必要なスペースが確保でき、最適な広さのオフィスを選ぶことができます。
建物外観や設備の確認不足
設備や外観が企業のイメージに合わなかったり、不備があると、ブランドイメージや業務効率に悪影響を与えることがあります。
複数の物件を見て、こだわりたいポイントを明確にしておくのが効果的です。チェックリストを作成し、建物の外観や設備をしっかり確認することで、企業のイメージに合うかどうかを判断しましょう。
申込書類の遅れによる物件確保の失敗
書類の準備が遅れたために、希望していた物件を他のテナントに取られてしまうことがあります。気に入った物件があったのに逃すのは非常にもったいないことです。
申込時にどのような書類が必要になるか、その書類を準備するために社内でどれくらいの期間がかかるのか、事前に確認しておくことが重要です。気に入った物件があったときには速やかに提出できる体制を整えておきましょう。
内装工事やレイアウトの失敗と回避策
オフィスの内装工事やレイアウト設計は、見た目だけでなく、実際に使いやすい空間を作ることが求められます。しかし、計画が不十分だと、デザインや費用、工事の進行などで思わぬ失敗が発生することがあります。ここでは、内装工事やレイアウトで陥りやすい失敗と、その回避策について具体的に見ていきましょう。
デザインと機能性のバランス不足
デザインにこだわった結果、完成したオフィスは見た目は良いものの、実際に使用してみると使い勝手が悪いという事態に陥ることがあります。
デザインだけに重点を置くのではなく、実際の動線や業務フローを考慮し、内装業者に業務の具体的な様子を共有することで、機能性を重視した設計を行いましょう。
費用の誤算
内装工事の費用を過小に見積もり、結果的に予算を大幅に超えてしまうことがあります。
内装業者に予算を伝え、その範囲内で可能な工事内容を提案してもらうことも有効です。また、見積書を受け取った際には、何が含まれているか、何が含まれていないかをしっかり確認しましょう。相見積を取る際には、どちらかに項目漏れがないかをチェックしておくことも大切です。
工事区分や工事進行の失敗
工事区分(A工事、B工事、C工事)を考慮せずに見積書を取得すると、ビル指定業者の費用との間に大きな差が生じ、予算や工期が大幅にずれることがあります。
ビルごとの工事区分を事前に確認し、その条件に基づいて正確な見積書を取得しましょう。早い段階からビル指定の施工業者と内装業者が連携できるように調整すると、スムーズに進行します。
通信環境の不備
移転後、インターネットや電話の設備が整わず、移転日に間に合わない、あるいは工事は完了したはずなのに接続されていないというトラブルが発生し、業務に大きな支障をきたすことがあります。
通信環境の整備は、余裕を持って完了させ、業務開始日より前に構築が完了していることを確認しておきましょう。
契約・解約についての失敗と回避策
オフィス移転において、契約や解約の手続きは非常に重要です。しかし、契約書類の確認不足や原状回復費用の見落とし、入居・退去の日程調整不足などが原因で、後々大きな問題に発展することがあります。ここでは、契約・解約に関連するよくある失敗と、その回避策について解説していきます。
契約書類の確認不足
契約書類を十分に確認しないと、意図しない条件に同意してしまうリスクがあります。特に、特定の工事業者の指定やペナルティ条項などを見落とすことが考えられます。
契約書は細部まで確認し、疑問点があれば仲介会社等に説明を依頼しましょう。契約内容をしっかり理解することで、後々のトラブルを避けることができます。
不動産に関してはたびたび法改正がおこなわれますが、ビルオーナーや管理会社の契約書は古い内容のまま使われていることもあります。弊社が仲介させていただく中でも、法改正に対応していない部分や曖昧な表現を確認し、修正を依頼することがよくあります。仲介を通さない場合でも、契約書の確認は非常に重要です。
原状回復費用の見落とし
原状回復のことを忘れていて、解約予告を出してから高額な費用に気づき、驚くことがあります。特に移転先が決まってから初めて費用を知ると、予算に大きな打撃を受けることになります。
移転を決めたら、できるだけ早い段階で見積もりを取得しておくと安心です。時期に余裕を持って見積もりを取得することで、契約書と照らし合わせて範囲や金額が適切か冷静に確認することもできます。
オフィススペースが余っていると、もったいないので削減したいと考えるのは自然なことです。しかし、移転をしようと思い問合せをいただいた企業様の中でも、現オフィスの原状回復費用の見積もりを見て移転を見送るということも珍しくありません。コスト見直し目的のケースでは特に、毎月の賃料の面だけでなく移転にかかる費用を正確に把握し、どのような移転なら本当にメリットが出せるのかを検討する必要があります。悩まれたらぜひご相談ください。
入居・退去のスケジュールの調整不足
新オフィスの契約開始後に内装工事が必要で、旧オフィスは解約日までに原状回復を完了しなければなりません。賃料を節約しようとギリギリの日程を組むと、工事が間に合わず、一時的にオフィスがなくなってしまうということが起こります。
工期を確認し、余裕を持って日程を組むことが重要です。契約開始日や解約日は変更が難しいことが多いため、事前に全体の進行を見越して計画を立てましょう。
実は弊社もかつて、2拠点を統合する際に新オフィスの入居工事が一方のオフィスの退去までに間に合わず、一時的にもう一方のオフィスを詰めて使用していた…ということがあり、スケジュール調整の難しさを実感した当事者でもあります。
そこまでではなくても、一部家具が営業開始に間に合わないというケースは実はよく起こることで、業務に支障が出るようなモノについては余裕をもって手配しましょう。
オフィス移転の成功のためのポイント
ここまで、オフィス移転で起こりうる失敗やその回避策を見てきましたが、成功のポイントはどこにあるのでしょうか。大きく2つの要素が挙げられます。
計画と予防策の重要性
オフィス移転をスムーズに進めるには、詳細なスケジュールを作成し、各段階で発生するリスクを事前に把握することが大切です。たとえば、契約書の確認や工事の日程管理など、進行中に起こりうる問題を予測し、対策を立てておくと安心です。定期的に計画を見直し、必要に応じて調整することで、問題が起きてもすぐに対応できます。
信頼できる業者の選定
信頼できる業者を選ぶことは、オフィス移転成功の大きな鍵となります。オフィス移転プロジェクトを自社で漏れなく進めるのは難しく、担当者の負担も大きくなります。そのため、安心して任せられる仲介業者や内装業者を見つけ、彼らに伴走してもらうことが重要です。業者の過去の実績や対応力の他、スピード感やコミュニケーションの取りやすさも考慮し選定しましょう。
まとめ
オフィス移転は多くの準備と慎重な判断が求められるプロジェクトです。本記事で解説した失敗しがちなポイントを理解し、確認しながら進めていきましょう。計画的なスケジュール管理や、信頼できる業者との協力も、成功の鍵となります。
また、他社の移転事例からも多くを学ぶことができます。「ご契約者様インタビュー」では、アットオフィスに移転をお任せいただいた企業様の実例を紹介していますので、ぜひご参考ください。
当記事の監修者
岡田 育浩 | 専務執行役員 執行部統括部長
得意分野:オフィスビル賃貸仲介・リーシング・PM、事業用不動産サブリース、滞納管理、立退案件、訴訟示談交渉、WEBマーケティング
2004年に不動産業界に入る。オフィスビルの賃貸仲介を中心に、老朽化ビルの再生活用支援、サブリースや管理ビルの資産運用など、オフィスビルを中心に店舗クリニックなどの用途を含め事業用不動産の領域を専門とする。Webを中心としたマーケティング領域も得意分野。オフィスを探している、オフィスが埋まらない、オフィス以外の用途で賃貸に出す方法が分からない、賃貸ビル経営の事業承継など、現在の形にとらわれない柔軟な発想でビルの資産価値向上に尽力している。