マンションをオフィスにしたい!
事務所利用で気を付けたい点は?
オフィスをどこに構えるのか考える際に、オフィスビルの利用を検討する場合が多い傾向です。
しかし、小規模な会社であれば、わざわざビルを借りるのは費用が高くためらってしまう人もいるでしょう。
そのような人には、マンションをオフィス利用するという選択肢があります。
実際にマンションをオフィスとして活用し会社経営をするケースは少なくありません。
しかし、普通のオフィスビルとは勝手が違うため、いくつか注意しなければいけない点があります。
そこで、ここではマンションのオフィス利用で気を付けたい点について紹介します。
1. 事務所利用可能か住宅専用かを確認
マンションの大部分は、住宅専用の物件として貸し出されています。
なかには、事務所利用が可能なマンションもあるのですが、物件の数としては住宅専用のものよりも少ない傾向です。
そのため、これからオフィス利用を考えているならば、その物件が事務所利用できると確認する必要があります。
住宅専用のマンションを事務所として利用してしまうのはルール違反であり、ほかの住人に迷惑にもなるのです。
事務所利用をすると、不特定多数の人が頻繁に出入りする可能性があり、ほかの入居者には迷惑になるため、住宅専用として貸し出されている物件もあります。
また、事務所として利用可能であっても、どんな職種でも入居できるとは限りません。
マンションには、専有が認められる区分とそれ以外の共用部分があり、共用部分を不特定多数の人が利用できるかどうかは物件ごとに違いがあります。
事務所として利用可能な物件にも、住宅として利用する入居者はいるのです。
もし、事務所の利用が可能でも共用部分を住人しか利用できない物件の場合、事業の種類によっては入居を許可されないケースもあります。
なぜなら、不特定多数の人が頻繁に来訪すると、防犯上の理由からトラブルが増えやすいからです。
ほかの住民からクレームが寄せられることもあるでしょう。
そのため、人の出入りのあまりない職種の方が、事務所利用は認められやすい傾向です。
最終的にその物件が事務所として利用可能かどうかを決めるのは管理会社や大家になります。
相談する際には事業の内容を詳しく説明しましょう。
2. 住宅専用と事務所利用可の違いは?
マンションのオーナーは、その物件の登記をする際に用途を登録します。
居住用と事務所用のどちらかの用途を登記するのですが、これによって税金が変わります。
たとえば、固定資産税は居住用と事業用では税率が大きく異なっているのです。
登記した内容と同じ用途で利用しなければならず、異なる用途で使いたいならば用途変更の申請が必要です。
もし、住居専用で登記している物件を事務所利用してしまうと、脱税していると思われるかもしれません。
マンションでは、固定資産税が一般的に居住用よりも事業用の方が高くなる傾向です。
居住用では共有スペースは敷地面積に含まれないのですが、事業用では共用部分も敷地面積に含みます。
そして、固定資産税は敷地面積の広さに比例して高くなるため、居住用の方が税金はお得です。
したがって、居住用の物件を事務所利用するのは、固定資産税が本来発生する分よりも低くなっており、脱税しているのと同じことになります。
もし居住用物件の入居者が勝手に事務所利用していて、オーナーがそれを黙認しているならば、脱税ととらえられるかもしれません。
そのため、このようなケースでは事務所利用している入居者を退去させるケースがあります。
もちろん、事務所利用可となっている物件は、最初から事業用として登記されているため、事務所として活用しても問題ないのです。
3. 事務所契約と住居契約のどちらで契約するか
マンションを借りる際には、事務所契約か住居契約のどちらかを選択することになります。
なぜなら、それぞれに借りる際の条件が異なるからです。
もし事務所契約する場合は、賃料に消費税が課税されます。
賃料に消費税がかからないのが一般的だと思われていますが、住宅利用の場合には特別に非課税になっているだけなのです。
そのため、基本的には賃料に課税されるのが原則となっており、事務所契約でも税金が発生します。
また、敷金や保証金といった預託金については将来返還するため非課税です。
ただし、預託金から敷引金や償却費が引かれる場合には、その分には消費税がかかります。
また、原状回復については事務所契約の場合は床や壁、天井のクロスなどすべてを張り替えるのが一般的です。
事務所契約では、原状回復費用をすべて負担しなければいけない契約になっていることもあります。
具体的な費用は、物件ごとに異なり契約書に記載されている内容に従うのが一般的です。
一方、住居用の場合は、自己負担でクロスの貼り替えを要求されるケースはあまりありません。
故意にクロスを汚したのであれば費用を請求されますが、普通に暮らしていたならば、経年劣化したものを原状回復させる義務はないのです。
たとえ、契約書で全額自己負担するべきと書かれていても、居住用の場合はそのような契約が無効と判断される場合が多い傾向です。
別のケースとして、事務所利用可のマンションを住居契約として借りていて、途中で事務所契約に切り替えることがあります。
この場合は、契約変更した日からの賃料が課税対象です。
ただし、事業用への使用を始めたことを大家に内緒にしていた場合は、契約内容が変わらないため賃料は非課税のままです。
しかし、このような行為はマナー違反であり、見つかると退去させられるかもしれません。
4. オーナーが事務所利用を嫌がる理由は?
基本的に多くのマンションのオーナーは、事務所利用を嫌がる方が多い傾向です。
なぜなら、オーナーがほかの住民とトラブルになる可能性を避けたいからです。
事務所利用を始めるには、登記を事務所利用可にしなければいけませんが、手続きは比較的簡単なものになります。
そのため、登記を理由としてオーナーが事務所利用を敬遠しているわけではありません。
事務所利用可の物件であっても、基本的にマンションは居住用として利用している人が多いです。
もし事務所利用している入居者がいると、そこに不特定多数の人が出入りする可能性があります。
見知らぬ人が頻繁にマンション内を出入りしているのは、入居者を不安にさせてしまいかねません。
もちろん、事務所利用したからといって不特定多数の人が常に出入りするとは限りませんが、オーナーは事務所利用と聞けば、大勢の人が出入りする可能性を考えてしまいます。
また、事務所として利用し、違法な事業を始めるのではないかと恐れるオーナーもいるでしょう。
実際にそのようなケースがないわけではなく、オーナーがそう考えるのは仕方のないことかもしれません。
そのため、オーナーとしてはできるだけトラブルを避けたがるものであり、事務所利用化にするのはリスクがあると判断されるのです。
そもそも、事務所利用可にすることのメリットもあまりないため、多くの物件は事務所利用を不可にしている一面があります。
5. 居住規約に抵触して管理組合ともめるケース
多くのマンションには管理組合があり、入居者の平穏な生活を守るための活動をしています。
管理組合は、一般的に居住規約を定めていることが多い傾向です。
これは、そのマンションを利用する際のルールのようなものです。
そして、この居住規約に事務所利用を禁じる内容が記載されていることがあります。
事務所や店舗としての利用を禁止する記載があるのに事務所利用してしまうと、居住規約違反に問われるかもしれません。
そうなると、管理組合より退去を求められる可能性があります。
管理組合による居住規約に、法的拘束力があるのか疑問に思う人がいるかもしれません。
居住規約は、法律に基づいた内容となっており、それに従う義務があります。
事務所利用不可という規約があるならば、その物件で事務所利用することはできないのです。
ただし、事務所利用が発覚したから、即刻退去を求められるとは限りません。
なぜなら、事務所利用によって、明らかに被害や損害が生じていない限りは、管理組合も強い対応は取れないからです。
しかし、規約に違反していることが分かれば、それ以降その物件を使い続けるのは困難になるでしょう。
ほかの入居者とトラブルになる可能性があり、居心地が悪くなって、気まずい状態で過ごすことになりかねません。
これからマンションを借りる際には、事前に居住規約を確認し、事務所利用可能か相談しましょう。
6. 個人事業主やSOHOでは事務所契約でマンションを借りにくい
最近は、インターネットを利用した事業をしている人が増えています。
また、ライターやデザイナーなどクリエイティブな仕事をする人もいるでしょう。
これらの事業を行っている場合、事務所利用化の物件であっても住居契約をすすめられることが多い傾向です。
あるいは、そもそも物件の審査に落とされてしまう可能性も高いでしょう。
なぜなら、上記の仕事は収入が安定していないと思われているからです。
オーナーにとっては、収入が安定していることが何よりも大切です。
毎月、きちんと賃料を支払ってくれる入居者に住んでもらいたいと考えています。
そうなると、個人事業主やSOHOは安定した収入があるとイメージされにくく、審査で不利になります。
ただし、きちんとした収入があることをアピールできれば、認められるケースもあるでしょう。
そのため、所得税の納税証明書や住民税の課税証明書などを用意しておくと賢明です。
これらの書類は、安定した収入があることの証明となります。
過去数年分の収入を証明できれば、信頼されやすいでしょう。
貯金がたくさんあることでアピールするのは、あまり有効ではありません。
なぜなら、オーナーは入居してから継続して収入があることを重視しているからです。
貯金額が多くても、それは収入の安定性とは無関係のため、アピールにはなりにくい一面があります。
個人事業主やSOHOの経営者は、自分達の信頼性が低いことを自覚し、積極的にアピールしましょう。
7. セキュリティが厳しいマンションでは事務所利用が難しい
マンションの中には、オートロックや監視カメラなどが設置され、セキュリティの厳しい物件があります。
このタイプの物件は、入居者以外の人の出入りが難しくなっている傾向です。
そうすることで犯罪者の侵入を防ぎ、入居者に安心して暮らせる環境を保証しています。
したがって、このような物件は事務所利用が難しくなるでしょう。
事務所利用にすることで、居住者以外の人の出入りが多くなるとイメージされやすい一面もあります。
それでは、せっかくセキュリティを厳しくしている意味がなくなります。
ほかの入居者にとっては、見知らぬ人が共用部分を出歩くことになり、不審や不安に思ってしまうでしょう。
ただし、事業によっては住人以外の人の出入りが皆無なケースもあります。
たとえば、個人事業としてネットを通じて仕事のやり取りをしているならば、自宅に人を招く必要がありません。
この場合は、うまく事業内容を説明することで、不特定多数の人の出入りがないことをアピールし説得できるかもしれません。
最終的に、その物件で事務所利用できるかどうかは大家の判断によるのです。
不動産会社を通じてうまく説得してもらえば、事務所利用を認めてもらえる可能性があります。
8. 住宅専用マンションの事務所利用は違反ととらえるべき
SOHOのような小さな事務所であれば迷惑をかけないと判断し、居住専用マンションを事務所利用する人がいるかもしれません。
しかし、居住専用マンションに住むならば、事務所利用を安易にするべきではありません。
たとえば、看板を掲げたり、ポストに屋号を表示したりすると近隣住人に知られてしまいます。
そうなれば、すぐに管理会社や大家へクレームが寄せられ、退去を迫られることになりかねません。
ただし、事務所として登記せず、個人事業主やSOHOとして周りに迷惑をかけずに利用することは可能です。
その場合でも、一般的な事務所としての使い方をするのは違反となります。
たとえば、ライターやデザイナーが屋号をポストに表示することも、居住専用物件では禁止されていることが多い傾向です。
9. レンタルオフィスの利用も視野に
マンションを事務所として利用するのは、事務所利用可の物件が少ないためハードルが高いです。
事務所利用可の物件でも、大家に認められなければ入居できません。
また、仮に入居できたとしても、ほかの居住者とのトラブルの可能性が常に存在しています。
そもそも、マンションは居住用の建物であり、事務所利用に最適化されていないものです。
それならば、最初から事務所利用を前提につくられているレンタルオフィスの利用の方が満足しやすいでしょう。
レンタルオフィスには開業のために必要な備品や設備が整っており、簡単に入居して事務所として利用できます。
一般的な貸事務所よりも初期投資を抑えられ、審査の基準も比較的ゆるい傾向です。
そのため、貸事務所よりも借りやすくハードルが低いといえます。
オフィス探しに迷っている経営者や担当者は、レンタルオフィスに注目してみましょう。