生産性もアップ!衛生基準を守って
働きやすい環境を作ろう(令和4年 改正対応)
オフィス環境の改善により、従業員の生産性が大きく向上することは多くの研究で明らかになっています。特に衛生基準を守ったオフィスは、快適で安全なだけでなく、従業員の健康やモチベーションにもプラスの影響を与えます。令和4年に改正された様々な基準を理解し、それらを遵守することで、より良いオフィス環境を実現しましょう。
オフィスの衛生管理とは?
衛生管理の重要性
オフィスの衛生管理とは、職場環境を清潔で衛生的に保ち、従業員が健康で快適に働けるようにするための一連の活動を指します。これには、空気の質の管理や温度・湿度の調整、作業スペースの整備など、多岐にわたる要素が含まれます。
オフィスの衛生管理は、日常的な清掃や消毒、換気の確保だけでなく、適切な設備やインテリアの選定も含まれます。従業員一人ひとりが無意識のうちに衛生環境が整っていると感じることが、生産性の向上に繋がるのです。
衛生管理の具体的な要素
具体的な要素としては、空気の清浄対策、室温・湿度の管理、照明の管理、作業スペースの確保、騒音対策、給水・排水設備、従業員の健康管理などが挙げられます。これらの要素を適切に管理することで、従業員の健康被害を防ぎ、生産性の高い職場環境を実現することができます。
衛生管理規則と法令の基本
オフィスの衛生管理には、以下の2つの主要な規則があります。これらの規則に基づいて、具体的な対策を講じることが求められます。
事務所衛生基準規則
「事務所衛生基準規則」は、事務所で働く人々の健康と安全を守るための基準を定めた規則です。この規則では、空気の質や照明、温度などの環境条件について詳細に規定されています。具体的には、室内の空気を定期的に換気し、快適な温度や湿度を保つことが求められます。また、従業員が一日中快適に過ごせるように、適切な照明環境を提供することも重要です。
労働安全衛生規則
「労働安全衛生規則」は、労働者の安全と健康を確保するための基本的な規則です。この規則では、職場の安全管理や健康管理について具体的な指針が示されています。例えば、機械装置の安全装置の設置や、緊急時の避難経路の確保が求められます。これにより、万が一の事故や災害が発生した際にも、安全に対応するための体制を整えることが重要です。
令和4年の改正のポイント
令和4年の改正により、いくつかの重要な基準が見直されました。以下は、その主な項目です。
照度について
事務作業における照度の作業区分が見直され、より詳細な基準が設定されました。一般的な事務作業には300ルクス以上、非定型的な事務作業には150ルクス以上の照度が必要とされています。これにより、従業員の目の負担を軽減し、作業ミスも減らすことができます。
トイレの設置基準について
男性用と女性用のトイレを分けて設けることを原則とすることはかわりませんが、新たに「独立個室型※」のトイレの設置が求められるようになりました。
※便所の全方向が壁等で囲まれ、扉を内側から施錠できる構造のもの
なお10名以内の少人数の事務所で、建物の構造からやむを得ない場合は、性別を区別しない独立個室型のトイレのみでも認められています。
休養室・休養所について
常時 50 人以上又は常時女性 30 人以上の労働者を使用する事業者において、休養室又は休養所を男性用・女性用に区別して設ける必要があります。専用の設備である必要はありませんが、必要なときに随時利用できる状態であることが求められます。プライバシーが確保されるよう配慮して設置しましょう。
休憩設備について
休憩所を設ける際には、アクセスしやすい場所に配置し、従業員がリラックスできる環境を整えることが重要です。体をほぐすための簡易的な運動スペースやリラックスできるソファなどを配置することで、従業員のリフレッシュ効果を高めることができます。
更衣室・シャワー等について
更衣室やシャワーの設置についても、プライバシーを確保した上で行うことが重要です。性別を問わず安全に利用できるよう配慮するようにしましょう。
温度について
職場の温度管理も重要な項目です。適切な温度を維持することで、従業員が快適に働ける環境を作ることができます。空調設備を設置しているオフィスの、室温の努力目標値に変更がありました。
一酸化炭素・二酸化炭素の測定について
環境基準の測定には、公認の検査機器を使用し、正確かつ定期的な測定を行うことが求められます。
●一酸化炭素:定電位電解法
●二酸化炭素:非分散型赤外線吸収法(NDIR)
が、検知管方式と同等以上の性能を有する測定器として明示されました。
救急用具について
緊急事態に備えて、救急用具を整備し、従業員がすぐに利用できるようにしておくことも重要です。事業者に備えることが義務づけられている「負傷者の手当に必要な救急用具及び材料」について、備 えなければならない具体的な品目が規定から削除されました。各事業所で起こりうることを想定し、応急手当に必要なものを備えましょう。
救急箱の中身を定期的にチェックし、消耗品や薬品の補充を怠らないようにしましょう。また、従業員全員に救急用具の使い方を説明する時間を設けることも大切です。
実践的な衛生管理のポイント
空気の清浄
定期的に換気を行い、空気清浄機を設置することで空気の質を保ちます。空気中の細菌やウイルスを取り除くために、高性能の空気清浄機を導入することが推奨されます。また、フィルターの定期的な交換や清掃を忘れずに行うことが重要です。
室温・湿度
社員が快適に過ごせるように、適切な温度や湿度を維持します。特に、夏季や冬季のエアコンの設定に注意が必要です。湿度管理も重要で、乾燥する季節には加湿器を利用しましょう。湿度が40%から60%の範囲内に保つと、ウイルスの活性を抑え、健康被害を防ぐ効果があると言われています。
照明
作業エリアの照度が適切であることを確認し、視力の負担を減らします。特に、デスク作業が多い職場では重要です。適切な照明環境を提供することで、目の疲れや頭痛を防ぎ、作業効率を高めます。自然光を最大限に活用し、必要に応じてデスクライトを追加してください。
作業スペース
従業員一人ひとりが快適に作業できるスペースを確保します。混雑や過密を避け、パーソナルスペースを十分に取ることが大切です。デスク配置を工夫し、リモートワークやフレックス勤務を導入することで、混雑を避けることができます。また、フリースペースを増やし、個々の作業環境を最適化することが求められます。
騒音・防音・振動
騒音や振動は集中力を削ぐ原因となります。防音設備や騒音の発生源を適切に管理しましょう。防音素材を使用することで、オフィス内の騒音を抑制します。また、作業ゾーンを区分けし、静かな業務環境を提供すると良いでしょう。
給水・排水
清潔な飲み水を提供し、排水の衛生管理も徹底します。トイレやキッチンの管理は特に重要です。ウォーターサーバーの定期的な清掃やフィルター交換を行い、従業員が安心して水を飲める環境を整えます。キッチンやトイレの排水設備も定期的に点検し、清潔を保ちましょう。
日常的な健康管理
従業員の健康状態を日々チェックし、異常があれば早期に対応できる体制を整えます。健康診断の定期実施や、社員一人ひとりの健康状態を把握するための仕組みを導入しましょう。体調不良時には無理をさせず、適切な休息を取らせることが企業の責任です。
従業員への衛生教育・安全教育
衛生管理や安全対策について、従業員への教育を定期的に行います。全員が理解し、実践できることが重要です。教育プログラムを設け、新入社員だけでなく、全従業員対象に定期的なセミナーや研修を実施しましょう。これにより、全員が一致団結して衛生基準を守ることができます。
定期的なチェック
環境基準が維持されているか、定期的にチェックし、必要な改善を施します。第三者機関を利用した評価や、自社内での環境分析を行い、常に最新の情報と基準に基づいた管理を行いましょう。定期的な監査を実施し、改善点を見つけ次第、速やかに対策を取ります。
まとめ
オフィスの衛生基準を遵守し、快適な職場環境を整えることは、従業員の生産性向上や健康維持に直結します。令和4年の改正を踏まえ、適切な環境管理を行うことで、より働きやすいオフィスを実現しましょう。
快適なオフィス環境は、企業の成長と従業員の幸福度を高める大きな要因です。正しい衛生管理と環境整備を怠らず、企業全体が一丸となって取り組むことが大切です。この記事が、皆様のオフィス改善の一助となることを願っています。
当記事の監修者
岡田 育浩 | 専務執行役員 執行部統括部長
得意分野:オフィスビル賃貸仲介・リーシング・PM、事業用不動産サブリース、滞納管理、立退案件、訴訟示談交渉、WEBマーケティング
2004年に不動産業界に入る。オフィスビルの賃貸仲介を中心に、老朽化ビルの再生活用支援、サブリースや管理ビルの資産運用など、オフィスビルを中心に店舗クリニックなどの用途を含め事業用不動産の領域を専門とする。Webを中心としたマーケティング領域も得意分野。オフィスを探している、オフィスが埋まらない、オフィス以外の用途で賃貸に出す方法が分からない、賃貸ビル経営の事業承継など、現在の形にとらわれない柔軟な発想でビルの資産価値向上に尽力している。